<中日6-0ヤクルト>◇6日◇ナゴヤドーム

 中日中村紀洋内野手(34)がヤクルト戦で3、4号を連発し、本塁打王争いトップタイに浮上するとともに、チームを連勝に導いた。いずれも新外国人リオスの直球を右方向へ運んだ。5日にプロ初の1試合2犠打を決めたが、この日は一転してパワーを披露。プロ初完投&初完封の吉見一起投手(23)を強力アシストした。3カード連続勝ち越しで2位に浮上した中日は、8日から阪神との首位攻防戦に臨む。

 1発目は右拳を斜め上に突き上げた。3-0で迎えた4回先頭の打席。中村紀はリオスの141キロ外角直球をバットに乗せ、右腕の力で押し込んだ。ナゴヤドームでは過去10本塁打を記録していたが、右方向は近鉄時代の98年5月27日、日本ハム戦で岩本から放って以来10年ぶり。力と技がかみ合った会心アーチに、思わず右腕が動いた。

 「ナゴヤドームでライトスタンドに入ったのは初めてなので(実際は2度目)自信になります」。

 2発目はニコリともしなかった。5点リードの6回先頭の場面。同じリオスから同じ外角ストレート。2発連続で、右翼席にたたき込んだ。一塁ベースを回る手前で着弾を確認すると、一瞬下を向き、無表情でベースを1周した。

 「狙っているわけじゃない。まずチームが勝つのが最優先なんでね」。

 変幻自在のフル稼働だ。前日は日本のプロ16年目で初めて1試合2犠打を決めた。本塁打王1回、打点王2回のスラッガーが小技で貢献した。この日は一転してパワーを披露。しかもただ振り回すのではなく、確実性と長打力を両立させた円熟の右打ちだ。「勝つ野球なんでね。与えられた仕事をきっちりこなして、今日も勝つことができたんで」。役割が180度変わった2日間を、当然のように振り返った。

 9戦で早くも4発。セ・リーグ本塁打王争いのトップタイに浮上した。スタートダッシュはベテランならではの経験が源だ。テスト入団から始まった昨年はアピールに必死だった。余裕のできた今年は、キャンプで体をいじめながら、かつ持病の腰痛を悪化させないよう細心の注意を払ってきた。「技術的に取り組んでいることは、もう少しやね」と話したが、自信を持って打席に立っている。

 落合監督も笑いが止まらない。6回まで1点ずつ奪った展開にふれ「7、8回も1点ずつ取ったらいいのにな、どうせなら。2点取っちゃ困る。今まであるの?

 そんなこと」と報道陣を笑わせた。前日は中村紀に2度バントを命じたが、この日の采配の振るいどころは吉見を完投させる判断くらい。激しく動くと思えば、泰然と動かず。3カード連続勝ち越しを決めた落合野球で、移籍2年目の中村紀は大きな役割を背負っている。【村野

 森】