<日本ハム8-7楽天>◇8日◇札幌ドーム

 野村楽天がまた悪夢に襲われた。日本ハム戦の2回に一挙7点を先制したが、先発一場靖弘投手(25)の乱調が大誤算だった。被安打1も、3回に3四球で押し出しの1点を与えたところでたまらず投手を交代したが、悪い流れを食い止められず7-8で大逆転負けした。7点差をひっくり返されたのは球団も野村克也監督(72)も初めて。サヨナラ連敗など開幕4連敗後の7連勝で一時は首位に立ったが、再び4連敗で4位に。試合と同じジェットコースターのような展開で借金生活に突入した。

 天国から地獄に落とされた。帰りのバスに乗り込む野村監督は「今日は4時間ゲームか?」とポツリ。3回裏を境に始まった悪夢。実際は3時間15分が4時間に感じるほど、苦しい逆転負けだった。

 重い足取りを止め、カメラの前のいすに座ると、あきれ果てた表情で話しだした。「7点を取ったから苦しくなっちゃった…。考えられない。ビビリ倒して。何が怖いか知らんけど。まさに自滅ちゅうやつや。あいつの心臓、これか?」。ノミの心臓とばかりに、右手で乳首をつまむしぐさをした。ボヤキの矛先は、先発の一場に集中した。

 2回に7点を挙げた。この日まで防御率0・64の日本ハム武田勝の対策として、大幅に替えたオーダーが機能した。開幕4連敗後に7連勝。3日には球団初の首位に立った好調楽天は、ここまででジ・エンドだった。

 3回からは別のチームだった。一場は、先頭・工藤に二塁打を許すと、もう制球が定まらない。8番の鶴岡に四球。三振で1死を奪ったものの、続く森本、田中と連続四球で、押し出しの1点を献上した。四球を何よりも嫌う野村監督。被安打1とはいえ、我慢も、ここで限界だった。

 1度そっぽを向いた勝利の女神は、再び振り返ることはなかった。必死の継投も、4回に追い付かれ、勝ち越されたのは6回だった。無死二塁で、日本ハム高口がバントを空振り。飛び出した二塁走者・鶴岡を刺すべく、捕手藤井は二塁送球。捕球した遊撃・渡辺直が三塁に投げたボールは、挟まれた走者・鶴岡の肩に直撃してしまう。無情にも、ボールがファウルゾーンに転がる間に、決勝点を許してしまった。悲劇的な逆転劇に野村監督は「草野球や」とボヤくばかり。

 7点差逆転負けは球団初の屈辱。「オレは弱いチームばかりやっているから、コンコン打たれて(逆転)負けるのはある。南海からな。7点もらってストライクが入らないなんて、こんなの初めてや」。通算1429敗目の野村監督でも初体験の負けっぷりに、一場と同点の2ランを浴びた小倉の2軍降格が決まった。

 初めて単独首位に立ってから5日でBクラスに転落した。一場は「すいません」と言うのが精いっぱい。顔をクシャクシャにし、涙を抑えてバスに乗った。野村監督は「ズルズル行くよ。こういう試合を落としたら。連敗街道の前兆です。間違いなく」と不吉な予感に、表情を曇らせた。野村監督のボヤキが続くその時、主砲・山崎武はロッカールームにナインを集め「明日勝てば(勝率)5割じゃないか」と鼓舞し、出直しを誓い合った。悪夢から、覚めるか続くのか。北の大地は、野村楽天にとって、大きな節目になりそうだ。【金子航】