<ヤクルト1-0広島>◇9日◇神宮

 ヤクルト3年目の村中恭兵投手(20)が、3位浮上の原動力になった。広島戦(神宮)で8回途中まで3安打無失点に抑え今季3勝目。被打率で、両リーグトップに立った。前回3日の巨人戦では9回1死までノーヒットに抑えながら、突然崩れて黒星を喫した左腕が3連勝に導いた。

 ニューヒーロー村中は今季2度目のお立ち台だった。「応援よろしくお願いします」とファンにアピールしたものの、大照れで台を降りた。「やっぱり(インタビューは)緊張します。今日はかまなかったですけど」と苦笑いだった。

 そんな村中がマウンドに立つと、頼もしい左腕に変身する。広島打線を被安打3。8回途中2四球を与えて降板となったが、得点は与えなかった。降板直前の8回も速球は144キロを計測した。いかにヒットを打たれないかを示す被打率は1割4分3厘で、両リーグトップだ。村中は「真っすぐとフォークがよかったです」と、好投の要因を挙げた。

 前回3日の巨人戦では9回1死までノーヒットの快投だった。だが力投にも打線の援護がなく、終わってみれば被安打2の失点3で負け投手になった。村中はそのビデオを何度もチェックした。「あのときは抑えたけど、真っすぐは走っていなかった。それを修正した。今日は指のかかりが良かったんで、打者は真っすぐを速く感じたと思う」。悔しい負け試合を研究材料に、2試合連続の好投につなげた。そしてこうも付け加えた。「あの打たれたところは見てないですけど…」。

 負けん気の強さが支えている。荒木投手コーチも接戦の展開にも耐えて投げる村中に「マウンドでは強い気持ちを持っている。開幕早々の試合で、それは感じていました」と話した。3月29日の巨人戦だった。同コーチがピンチでマウンドに駆け寄った際、実はマメができているにもかかわらず左手を握りしめ指を見せようとしなかったという。

 修正能力があり、さらに強い気持ちでマウンドを守り抜く。これで今季3勝3敗のタイ。チームの今季3度目の3連勝、3位浮上に導いた。高田監督も「ホントすばらしいピッチングだね。3位?

 まだまだ。でもずるずる落ちるより3位の方がいいよね。これに打線が絡むと開幕の勢いが出てくるんだが」と、チームの復調気配を喜んだ。

 村中には今度こそプロ初完投、完封の期待がかかるが、「僕には9回を投げ切れる体力、技術はまだないです。初回からどんどん行くピッチングをするだけです」。次回はどんな投球を見せてくれるのか。20歳の左腕が結果を意識せずどんどん突っ走れば、逆に快記録が見られるかもしれない。【米谷輝昭】