<中日6-3楽天>◇9日◇ナゴヤドーム

 オレ竜監督が、ノムさんにやり返した。中日落合博満監督(54)は、楽天野村克也監督(72)との交流戦最終ラウンドに6番井上、7番英智の新布陣を選択。スタメン6戦目の井上が決勝打、守備のスペシャリスト英智がプロ初の3打点をマークし、粘る相手を振り切った。前日は元中日勢に活躍されて敗れたが、この日はきっちりお返し。中4日で送り出した先発山本昌に勝ち星はつかなったが、智将対決を2勝2敗で終えた。

 落合監督はにやりと笑った。「下位打線がな…。みんなクビの皮1枚つながっているやつらばかりだ。総入れ替えしようと思っていたところだ」。英智が3打点、井上が決勝打と控えだった男たちの起用がズバリ。前日、元中日勢を起用した野村楽天に惜敗した借りを返した。

 同点で迎えた4回2死一、二塁。均衡を破ったのは守備のスペシャリスト英智のバットだった。楽天先発田中のスライダーをとらえた打球は左中間を真っ二つ。三塁打で2点を先制した。3-3に追いつかれた直後の6回には井上が右前に勝ち越し適時打を放つと英智も中前適時打で続き、自身初の1試合3打点を記録した。

 「初めて?

 そんなにすごいことだったんですね…。試合前、井上さんと『きょうは2人で3本打ちましょう』と握手していた。言葉に出した通りになってよかった」。

 思えば昨年、守備固めで好守を連発する英智は野村監督に「自衛隊」と表現された。専守防衛。守備を称賛されながらも打撃への評価は低かった。だが、この日、英智が打つたびに相手ベンチでは野村監督が苦々しい表情を浮かべていた。

 試合前のメンバー交換、すでに落合監督は野村監督と火花を散らしていた。

 「中4日でじじいを投げさせて大丈夫か?

 同じ技巧派の下柳(阪神)は攻略したぞ」。

 意表をつく42歳山本昌の中4日先発を野村監督が皮肉ってきたが、落合監督は涼しい顔だった。

 「フワフワボールだから大丈夫です。下柳より一段上だよ。知ってるよ。野球を知ってる」。

 情報戦に重きを置き、データを重視する野村監督に今季初めて偵察メンバーを使わせながら、知将同士の対決を2勝2敗の痛み分けに持ち込んだ。

 「入れ替えるのは簡単だ。なかなか下(2軍)から上がってくるやつもいないけどな。まあ、打っている者は落とせないだろう」。

 指揮官は独特の言い回しで英智、井上をねぎらった。停滞していた下位打線が打ち、野村監督に借りも返した。阪神とのゲーム差は7・5のままだが、胸のつかえが少しは下りた夜かもしれない。【鈴木忠平】