<阪神4-3中日>◇2日◇甲子園

 勢いは止められない。初回、2死三塁。阪神金本知憲が簡単に先制点をたたき出した。カウント1-1。中日山本昌の外に逃げるスライダーについていった。巧みなバットコントロールで、右前にライナーを放つ。「何もないです」。試合中、広報に寄せた言葉はクールだったが、試合の流れを引き寄せる大きな1打となった。4回にも右前打。派手ではないがサヨナラ勝ちにしっかり貢献。笑顔で引き上げた。

 試合前に好調を証明する賞をゲットしていた。6月の月間MVP・セリーグ打者賞に選ばれた。05年5月以来、3年ぶり3度目の受賞。「久々という感じ。05年も交流戦の優秀選手(日本生命賞)になって月間MVPをもらった。いい巡り合わせかな、と思います」。

 1週間前の6月25日は交流戦の「日本生命賞」にも選ばれた。リーグ制覇した3年前と似た展開を喜んでいた。先の話とはいえ、セ界の頂点に立つ姿を少し想像できた一瞬だったのかもしれない。

 6月は全17試合にフル出場。打率4割1分3厘、20打点、6本塁打の3部門でリーグトップに輝いた。「少しホームランが少なかったんで物足りないですが、浜風と戦っていきたいと思います」。もちろん満足はしないが、好調をキープし、言葉も弾む。

 「周りの人から全く面影がないな、という言葉を耳にする。自分の中でも手術したんかな、と思う。リハビリのしんどかった時期がうそのよう」。オフに左ひざを手術した。その事実を忘れさせる活躍だ。

 夏場に向け、景気のいい言葉も飛び出した。3、4月の月間MVPを受賞した新井をいじくった。「広沢さん(打撃コーチ)と握手をした時、新井“大選手”が『何ですか?

 何ですか?』と聞いてきた。彼も気になるみたいですね。気持ち悪いですね。新井さんに一歩でも近づけるように頑張ります。新井さんはまだ(月間MVP受賞が)1回だし、2回取れば、今年に限っては越えることができるかな」。“弟分”をからかったアニキはオレ竜退治でもしっかり結果を出した。【佐井陽介】