<日本ハム2-1西武>◇25日◇札幌ドーム
日本ハム多田野数人投手(28)が首位西武の強力打線を7回3安打1失点に抑え、ホームでの首位攻防第1ラウンドで白星をもたらした。これでルーキー単独トップの6勝(3敗)だが、本拠地・北海道では登板6試合で防御率2・04、負けなしの5勝と抜群の相性だ。7月に入り、この日まで6勝11敗1分けで貯金を3まで減らしていたチームの連敗を2で止め、西武とのゲーム差を3・5に詰めた。
失意に包まれていた札幌ドームのマウンドを一夜で、一変させた。多田野が、威風堂々とマウンドに仁王立ちした。ダルビッシュの力投で黒星という、前夜の嫌なムードを忘れさせるような快投。「みんな口には出しませんでしたけれど、それがこういう結果になったと思う」。攻守に総力戦、1点差でもぎ取った接戦白星。その中心に、力強さを増した新人がいた。
パワフルな西武打線を、硬軟織り交ぜた投球術で破壊した。微妙に手元で動く140キロ前後の速球を軸に、小さな変化のスライダー、フォークで丁寧にバットの芯を外していく。6回に中島に右翼フェンス直撃の同点二塁打を浴びたが、7回を3安打1失点。強力中軸3人には、その中島の1安打しか許さなかった。わずか91球、攻撃のリズムもつくった。初顔合わせの首位相手に、完ぺきなゲームメークだった。
デビュー戦白星を飾った札幌ドームから、北海道内の主催試合では6戦負けなしの5連勝。両リーグ新人トップの6個目の白星を簡単に積み上げた。藤井、ダルビッシュの好投を生かせず、連敗で迎えた大一番。梨田監督が「ほぼ完ぺき。速さを感じさせたりして、(打者は)距離がとれなかった」と絶賛する働きだった。普通の新人ができない、キャリアもフル活用した。「大振り、強いスイングをしてくるアメリカで経験したことを生かした」。長く、苦しい5年間の米球界時代をオーバーラップさせながら、牛耳っていった。
これまでの道のりが遠回りではなかったことを証明し、先発陣に欠かせない存在になった。この日、対戦した西武後藤は同じ「松坂世代」で、東京6大学では立大のエースと法大の主砲としてしのぎを削った仲。「あの時のイメージと違った。全然、何(の球種)を投げているか分からなかった」と舌を巻いた。前回19日オリックス戦は5回2/3、5失点。降板直後には悔しさのあまり、ロッカー室で取り乱し、暴れた。痛恨の思いを抱えながら待ち続けた挽回(ばんかい)のチャンスで、すぐに汚名返上してみせるメンタルの強さを見せた。
マウンドでは冷静そのものだが、チーム内では「いじられキャラ」で浸透。21日に札幌市内で行われた選手会主催の決起集会では、同い年の森本らにあおられ、2度もあいさつさせられるほどの“標的”だ。その会の締めの言葉を任され、爆笑を誘ったという。「僕のセットポジションがボークだと思う人は今、僕のところへ来てください!」。両リーグトップの7ボークを自虐的にギャグにしてしまう懐の大きさ。投球術と同様に人間性でも“奥行き”を見せ、周囲の信頼を集めている。暗雲漂っていた、勝負の8月直前。多田野が、夏反抗の息吹を吹き込んだ。【高山通史】



