<中日5-4横浜>◇29日◇豊橋

 中日が中村紀洋内野手(35)の3本塁打で劣勢をはね返し、今季4度目のサヨナラ勝ちを決めた。中村紀は2回に逆転の17号2ラン、6回に同点の18号ソロ、8回にも同点の19号ソロを放ち、4安打4打点の大暴れ。森野のサヨナラ打を呼び込んだ。吉見一起投手(23)が右肩痛で球宴出場を辞退し、長期離脱見込みとなる中、3位に低迷する中日は球宴前ラストゲームをかろうじて拾った。

 完ぺきな一撃だった。中村紀は守護神寺原の得意なシュートを待っていた。カウント1-1からの3球目。打球をバックスクリーンにぶち当てる豪快な19号ソロ。この試合3本目の本塁打で、4-4の同点に追いつき、手を突き上げた。

 「狙っていました。何でもかんでもは打てないけど、コレというボールがくれば打てる。負けているところで打ててよかった」。

 独壇場だった。まずは1点を追う2回無死一塁で小林のフォークを右中間に逆転2ラン。さらに6回には小林の直球を右翼ポール際に運ぶ同点ソロ。首を右に傾けて、ファウルにならない打球を確認し「ホームランを狙ってました」とさらり。4回の第2打席でも中前打を放っており4打数4安打4打点、3本塁打の大爆発だった。

 中村紀の1試合3発は、近鉄時代の01年5月29日日本ハム戦以来4度目。この日は3本とも1点ビハインドの場面で放ったことに意味がある。「ホームランという結果よりも、そういう場面で打てたことが1番」と胸を張った。

 執念だった。この日負ければ、中日は04年の落合監督就任後初めて貯金を使い果たして球宴休みを迎えていた。今年の春先、中村紀は中日をこう評した。「このチームにいると、いつも今日はどうやって勝つかなと思える。勝てるかな、もしかして負けるかな、とは全然思わない。これはすごいこと。今までそんな野球を経験したことはなかった」。昨年2月に浪人危機を救ってくれた落合監督が率いる常勝軍団で戦える喜びがある。「勝率5割になるわけにいかん。絶対に勝たないといけなかった」と振り返った。

 7月は貯金1の“がけっぷち”が4度あったが、すべて踏みとどまった。4日連続でノックバットを握ってチームにカツを入れた落合監督は「別にまだ総括しなくてもいいだろ」。首位阪神に13ゲーム差の3位で、2位巨人にも3・5ゲーム差をつけられている。イバラの道は続くが、144試合トータルの結果が出るまで過去を振り返らずに突き進む。【益田一弘】