球界に衝撃が走った。ソフトバンク王貞治監督(66)は5日、胃の腫瘍(しゅよう)摘出手術を都内の病院で受けるため、今日6日から休養することを発表した。西武10回戦(福岡ヤフードーム)の試合終了後に緊急会見を開き、自ら病状を明らかにした。6月上旬から胃のもたれを感じ、同26日に福岡市内の病院で検査を受けた結果、胃に手術を必要とする腫瘍が見つかった。6日に東京へ移動し、入院。再検査を経て手術を受ける。チームを離れる王監督に代わって、WBC期間中も監督代行を務めた森脇浩司チーフ兼内野守備走塁コーチ(45)が同職を兼任する。

 西武戦の試合会見を終えると、王監督はユニホームから私服に着替え、緊急会見を開いた。何度か言葉に詰まりながら、自らの病状を公にした。

 王監督

 6月の10日くらいから胃のふんもん部あたりが胸焼けする感じだった。アルコールも控えていたし、焼き肉なんかも内臓脂肪のことで控えていた。みんなにやせたと言われたけど、今回のことは関係ないと思っていた。

 6月26日に胃の組織をとって検査をした結果、手術を必要とする腫瘍が見つかった。

 年に2度、人間ドックで体の定期健診を受けているが、2年前からは福岡県内の病院でPET検査(陽電子放射断層撮影)も取り入れ、がんの早期発見を心掛けていた。01年12月に最愛の恭子夫人を失ったことが、きっかけだった。恭子夫人は胃がんのため、57歳という若さで急逝。「女房にしてやれなかったから」と、関係者にPET検査を受けている理由を語った。会見では「こんなに大変なこととは思わなかったが、早く検査をして良かった」と話した。

 チームを率いて12年目。今季は開幕前から多忙を極めた。2月からWBCで日本代表の監督を務め、世界一を達成。帰国後は休む間もなくペナントレースに突入した。だからこそ、健康には気を配ってきた。好んで汗を流したサウナは、心臓への負担が増えると自粛した。今年は内臓脂肪を燃焼させるために自転車を購入し、福岡市内を散策。片足に約1キロのおもりが入ったクツを履いて、球場入りしていた。

 「ON」として球界を背負ってきた長嶋氏が04年3月に脳梗塞(こうそく)で倒れたことに「かなりの衝撃を受けたようだ」(球団関係者)と、その後は特に体に気をかけた。

 選手、コーチ陣にはすべてを隠して指揮を執り続け、試合後の緊急ミーティングで病状を伝えた。王監督ならではの配慮だった。「この大事な時期に離れるのは残念に思いますし、自分が一番好きな野球から離れることが残念で悔しい。ファンの人にも申し訳ない」。選手には「テレビで見ているぞ」とも付け加えた。最後の最後までチームを、ファンを気遣った。

 今日6日に東京都内の病院に入院し、精密検査を受ける。入院期間は約1カ月に及ぶ見込み。「選手、コーチが頑張ってくれると思う。必ずや秋には、プレーオフを制して、日本シリーズに出て、日本一を奪還してくれると思う。チームにはいい風が吹き始めている」。確かな手応えと予感を抱いて、王監督は治療に専念する。

 ◆王監督の一問一答

 王監督

 1週間前に、ちょっと胃の具合が悪かったので検査に行きました。組織を取って検査した結果、手術しなければならない腫瘍があるという診断を(3日に)受けました。手術はなるべく早い方がいいだろうと。再度、検査を受けた上で、これは私の予想ですが、来週には手術をすることになると思う。明日(6日)からチームを離れますので、皆さんにご報告させていただきます。この大事な時期にチームを離れるのは残念に思いますし、自分が一番好きな野球から離れることは大変、残念で悔しい思い。ファンの人にも申し訳なく思います。その分、選手、コーチは頑張ってくれると思う。必ずや秋にはプレーオフを制して日本シリーズに出て、日本一を奪還してくれると思います。いつ帰ってこれるかわからないので、こういうコメントになるのは残念ですが。

 -選手への報告は

 王監督

 いい状態になってきているので、自分のやるべきことをキチッとやってくれと伝えた。若い力も出てきた。うまく行くときも行かないときもある、いい風が吹き始めているし、できることを思い切ってやってほしい。

 -監督不在の体制は

 王監督

 WBCのとき森脇コーチを中心に、みんなで相談しながら協力してやってくれた。その形をそのまま継承してやってくれと伝えた。

 -孫オーナーは

 王監督

 予想していなかったことで、驚かれていた。1日も早く手術を受け、最善を尽くして欲しい、と。1日も早く帰ってきて欲しいということだった。(2006年7月6日付日刊スポーツ)