今季限りでの辞任の意向を固めている阪神岡田彰布監督(50)が12日、南信男球団社長(53)と会談し慰留を受けたが翻意せず、辞任は事実上決まった。岡田監督は辞任後、しばらく野球界から距離を置く考えで、評論家活動なども行わない意向だ。球団は後任人事に着手するが、坂井信也オーナー(60=電鉄本社社長)は「合議制」で進める考えを示した。星野仙一SD(61)をはじめ、吉田義男氏(日刊スポーツ客員評論家)を相談役の候補に挙げた。従来のオーナーの独断ではなく、意見を集約した上で候補者をあげ、絞り込んでいく考えだ。

 岡田監督の決心は揺るがなかった。今季最終戦が行われたスカイマーク神戸の監督室で、ユニホーム姿のまま南球団社長と会談した。約30分の話し合いで、優勝を逃した責任をとっての辞任を改めて申し入れた。慰留を受けたが、今季限りの気持ちは変わらなかった。

 「これまで電話で話もしている。きょう会って話したからといって、何も変わらない。クライマックスシリーズ(CS)もあるから、最後まで頑張ってくれということだった」。CSは引き続き指揮を執るが、その表情は穏やかだった。

 岡田監督辞任の衝撃を受けながら、球団は後任の人選も進めることになる。坂井オーナーはスカイマークに着いたのが試合開始直前で、岡田監督と話す機会はなかった。「今は慰留するという思いしかない。皆さんに隠れて会います」と慰留を続けるとしながらも「ポスト岡田」については、阪神OBを中心とした有識者に意見を聞く考えを示した。

 「次期候補はまったく頭にない。うわさされる名前はあるけど、その人がどんな人か知らない。誰になるかは分からないけど、OBにも吉田義男さんとかいるし、意見は聞くと思う。決定するのはわたしですが、責任として」と話した。

 03年の日本シリーズ後に星野監督が禅譲した岡田監督は別として、これまで阪神の監督決定はオーナーの“専管事項”だった。手続き上、球団取締役会が開かれるが、歴代オーナーの決断がすべて。選考過程で球界関係者に意見を聞くことはあったが水面下の動きで、表だってのことではなかった。ちょうど、WBC監督人事を一任された加藤コミッショナーが有識者の意見を幅広く聞いているのと同じスタイルだ。当然、オーナー付シニアディレクターという立場の星野氏の意見も選考に反映させる。

 「星野SDにはまだ連絡していない。10日に偶然会って『オーナー大変ですね』という雑談をした。仮にそういう機会になって、岡田監督の先の話、監督を選ばなアカンとなれば意見は聞きます」。星野監督、岡田監督と続いた7シーズンで2度の優勝を果たし、常に優勝争いに加わるチームがつくられた。流れを引き継ぎ、チーム強化を託せる人材は誰なのか。坂井オーナーの入念な選定から、ポスト岡田問題が動きだす。