<日本シリーズ:西武3-7巨人>◇第5戦◇6日◇西武ドーム

 ラミレスが一気にギアチェンジした。7回、打球が二塁ベースに当たって右45度に大きくはねた時だった。福王一塁コーチの制止を振り切ると、大きな体を加速させた。右中間に転がったボールを右翼手が拾い、送球したが、間一髪で滑り込んだ。

 それまでチームは2安打に封じ込まれていた。流れを変えるプレーが必要だと思った。実はこの打席に本塁打を狙って立ったほど。試合展開を読む能力が、ラミレスを走らせた。「ギリギリのプレーだったけど、リスクを冒したかいがあったよ」とほおを上気させた。

 続く阿部の右前打で、この日2度目の激走で同点ホームを踏んだ。いつもは本塁打でゆっくりまわるダイヤモンドを全速力で一周した。チーム一の俊足を誇る鈴木尚とは東京ドームのロッカーが隣どうし。その鈴木も「ラミちゃんは実は速いんだよ。あそこで一塁止まりだったら点が入っていたか分からない」と目を見張る走塁だった。

 原監督も「チームリーダーの走塁が勢いをつけてくれた」と絶賛した。立役者はベンチに戻り、バスタオルを肩にかけると、おいしそうにゴクリと水を飲んだ。「土曜日(8日)に優勝を決めたいね」と、一気の日本一へ。止まるつもりはない。【竹内智信】