<中日2-4ヤクルト>◇28日◇豊橋

 アニキに並んだ!

 中日和田一浩外野手(36)が8号ソロ本塁打を放って阪神金本と並ぶリーグトップタイに躍り出た。チームは守備の乱れもあって再び借金生活に転落したが、頼れる5番和田はシーズン50発以上のペースと絶好調。自身初の本塁打王も夢ではない。

 和田の打球が豊橋の夜空に舞い上がった。1点を追う2回、ヤクルト先発川島亮の外角直球を完ぺきにとらえた。真っ青に染まった右中間スタンドへ飛び込む8号ソロ。「追い込まれていたのでコンパクトに振ったら入ってしまった」。嫌な流れを断ち切る同点弾にファンから大歓声がわき起こった。

 この本塁打で阪神金本と並んでリーグトップに立った。「それは関係ないです」。チームが敗れただけに試合後の和田に笑顔はなかった。だが、驚異的なペースで本塁打争いを独走していた金本に対し、和田は開幕からコンスタントにアーチを重ねてきた。そして、早くも金本をとらえた。

 スタンスをややスクエアにし、左足の上げ幅を小さくした新打法に挑戦した今季は開幕戦でいきなり2本塁打を放つ最高のスタートを切った。「状態はよくない」と言いながらも21試合で8本塁打はシーズン55発ペース。まだ気は早いが、自身初のホームラン王の可能性すらありそうだ。

 好調を支えているのは新打法だけではない。この日は打席に立つ前から“イメージ”をつくっていた。試合前、ベンチ裏のロッカールーム。和田はテレビ画面を食い入るように見つめていた。食事を手に、立ったままじっと見入った。視線の先には昨年のナゴヤドーム・ヤクルト戦。自身が本塁打を放った映像が流れていた。「打撃に終わりはない」という信念を持つ和田は常に自分のフォームをチェックして、毎試合、微調整を施している。

 2-4で迎えた9回、2死満塁の見せ場ではヤクルトの守護神林の前に二ゴロに倒れた。「最後は低めのいいところに投げられた」。申し訳なさそうに話したが、豊橋のファンは逆転サヨナラの夢を精いっぱい託した。今、オレ竜打線で最も頼りになる男。今日も周囲の期待を背負って打席に立つ。【鈴木忠平】

 [2009年4月29日11時14分

 紙面から]ソーシャルブックマーク