<横浜0-2中日>◇3日◇横浜

 中日の5番和田一浩外野手(36)のバットが不振の打線を救った。0-0の4回無死二塁、横浜先発グリンの内角へ食い込んでくるシュートをとらえた。できる限り体の近くに球を引きつけて打つ。独特の打法が右翼への伸びを生む。ややつまったように見えた打球は右翼スタンド中段に飛び込んだ。

 「得点圏に走者がいたので何とかしたかった。単独トップ?

 僕の場合、本数は本当にどうでもいい。勝ったことが大事です」

 この9号決勝2ランが出た時点で阪神金本を上まわり、セ・リーグ本塁打王争い単独トップに立った。それでも和田らしく、試合後はひたすら勝利だけを喜んだ。

 4連敗中のチームはこの日、敗れれば単独最下位となる状況だった。中でも打線は4試合でわずか4得点。森野、ブランコ、和田のクリーンアップは連敗中44打数6安打、打率1割3分6厘と、主軸の不振が敗北に直結していた。それでも落合監督は頑として打順を動かさなかった。和田は「みんな何とかしようと思っているんだけど、流れが悪い時はそれがつながらない」と苦悩ぶりを明かしていた。指揮官の「もっと苦しめ」というメッセージを受け止め、自力で連敗地獄を脱出した。

 頼れるのはバットだけではない。今季スタメンには4年目藤井、ルーキー野本という若いメンバーがいる。和田は外野陣のまとめ役として2人をサポートしている。4月11日、広島の新本拠地マツダスタジアムのデーゲーム。太陽光に苦しんでいた藤井にサングラスメーカーの担当者を紹介した。試合への心構えから、私生活まで助言。チームを引っ張る「オレ竜のアニキ」だ。

 最下位は免れたが、この日も得点は本塁打による2点のみ。「やはりクリーンアップが打たないとだめ。それだけ責任が重いところですから」。和田は帰りのバスに乗り込む直前、すでに4日の試合へ気持ちを切り替えていた。【鈴木忠平】

 [2009年5月4日11時40分

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