<ロッテ1-4横浜>◇20日◇千葉マリン

 新生横浜が初勝利だ。20日、田代富雄監督代行(54)率いる横浜がロッテ戦で交流戦初勝利をマークし、連敗を5で止めた。18日に大矢明彦監督(61)の休養が発表されたばかりで、就任2戦目での白星。村田、佐伯、金城のソロ3発で成瀬を撃沈。セ・リーグでこの日勝ったのは、最下位横浜のみ。この1勝が浮上のキッカケとなるのか-。

 

 ニヤニヤしながら佐伯が差し出したウイニングボールを田代監督代行はありがたく受け取った。9回1死一、二塁。一打で勝利が吹き飛ぶ瞬間を何とかくぐり抜けて、記念すべき「1勝」にたどりついた。それだけに勝利の余韻を感じられるほどの余裕はなかった。

 田代監督代行

 汗が1リットルぐらい出たね。本当に大変でうれしい。本当にうれしい勝利なんだけど、こういうのはユニホームを脱いだ時に、喜びが出るんじゃないかな。

 「オバQ打線」の本領発揮だった。悠々とホームに返ってくる選手を温かい笑みで迎えグータッチした。大矢監督からバトンを受け2試合目、火をつけたのは頼みの主砲のバットだった。1点を追う2回、先頭の村田が成瀬の初球、外角速球にバットをガツンと合わせた。右翼席に飛び込むボールを確認すると手をたたいて賛辞を贈った。さらに、続く佐伯が内角のスライダーを一閃(いっせん)。連続本塁打で逆転に成功すると「よしっ」と思わず声に出した。

 現役時代、お化けのように不思議と打球が伸びると評された田代監督代行のお株を奪うような村田の打球。だが、そこには魂がこもっていた。唐川に完投を許した前夜、宿舎へ帰ろうとすると、シャワーを浴びるため、腰にバスタオルを巻いて歩いていた村田に出くわした。師弟関係の気安さか、笑顔で話しかけた。ノーヒットに終わり「もう少し辛抱が必要かな」と思っていたが、主砲の口からは「次は必ずやります」と熱い言葉が聞けた。「いい雰囲気だった。結果はすぐ出るんじゃないかって思ってた」。予感は当たった。有言実行の村田は「連敗が止まって良かった。監督が代わって1勝できて良かった」と、静かに喜んだ。

 6回、ジョンソン、村田、佐伯が3人とも初球を打って倒れたシーンにオバQ野球の神髄が隠されていた。「2人が初球を打ってアウトになって、3人目も初球でアウトになると普通ボロクソに言われるのを承知で打ちにいった。ああいう気持ちが大事。攻めの姿勢がね」と佐伯を絶賛した。2試合目にして、目標とする野球ができそうな感触を手に入れた。「1がなきゃ先がない。気持ちを解くことなく、選手と一緒になって戦っていきたい」という目は、希望に満ちていた。【竹内智信】

 ◆オバQとは

 田代監督代行の現役時代の愛称。諸説あるが、(1)口に特徴がある顔が藤子不二雄の人気漫画「オバケのQ太郎」の主人公「Q太郎」に似ている(2)オバケのような飛距離(3)鈍足で足がない、などの諸説から命名されたと言われる。「アジの開き」「寅さん」という別名もあった。長距離砲としてブレークした77年、別当監督が名前の富雄にちなんだ欧米風の「トミー」を報道陣に提唱したが、定着しなかった。

 [2009年5月21日8時35分

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