<パCS第2ステージ:日本ハム3-1楽天>◇第2戦◇22日◇札幌ドーム

 野村楽天が、がけっぷちに追い込まれた。日本ハムとのクライマックスシリーズ(CS)第2ステージ第2戦(6試合制)、エース岩隈久志投手(28)で1-3と敗れ、アドバンテージと合わせて0勝3敗となった。野村克也監督(74)は今季限りで楽天を退団することが決まっており、23日に敗れれば最後となる。楽天の先発は田中将大投手(20)。奇跡の逆転へ踏みとどまるか、それとも最後の試合となるか。神の子マー君にすべてを託す。

 あの1球だけだった。7回2死満塁。岩隈は力勝負を挑んだ。カウント0-1から、日本ハム高橋に対し、内角へのシュートで詰まらせに行った。確かにバットの根元に当たった。だが、わずかに高く浮いた分だけゴロになるはずの打球も浮き、内野の頭を越されたヒット。終盤で許した痛恨の2点。それまでピンチの連続にも笑顔を絶やさず平静を装っていたエースから、ついに表情が消えた。

 調子は決して悪くなかった。直球は最速149キロをマークした。本来の決め球であるフォークを減らし、直球とシュートで押しまくった。「藤井さんのリード通り投げただけです」。3者凡退だった3、8回を除き毎回走者を背負ったが、なんとか踏みとどまった。「何度もピンチがあったけど、最後に取られてしまったので…」。普段は敗戦時でも冷静に試合を振り返る男だが、この日ばかりは言葉を探しても見つからなかった。

 最初は楽しむつもりだった。レギュラーシーズン終了から初戦までの練習期間中、リラックスした表情で調整を続けていた。チームメートと「うちのチームにとってCSはお祭り。年々、1つずつ上に行ければいい」と話していた。それでも地元ファンの熱狂ぶりに、一気に本気モードに切り替わった。ギリギリの緊張感を感じとり、夢から現実に近づいた日本一を強く願っていた。

 史上最悪のサヨナラ負けをエースではね返すはずが、想定外の連敗。日本ハムに王手をかけられ、あと1敗で「野村楽天」は終わる状況に追い込まれた。試合後、野村監督は「監督失格だな。4年もやってて全然教育できていない。解任されて当然だ」と吐き捨てるように言った。7回1死から金子誠に三塁線を破られた二塁打に「コーチも監督も、選手も気がつかない。1点勝負の後半で、キャンバス(ベース際)を固めるのは当然。三ゴロだったよ。当たり前のことが当たり前にできていない」と決勝点の原因となったプレーにボヤキ倒した。野村野球は準備野球。4年目の集大成で野村イズムが発揮できないことが悔やみきれなかった。

 がけっぷちに立たされて迎える第3戦。野村監督は「明日?

 昨日で終わってるやん。あんな負け方をして勝てるわけがない。もう無理だよ」と、圧倒的劣勢に弱音も出た。唇を噛んだ岩隈も「明日を信じるしかない」と、短く言葉を切った。日本シリーズへの夢は続くのか、それともついえるのか。きょうの絶対に勝たなければいけない試合に野村楽天のすべてがかかる。【小松正明】

 [2009年10月23日9時12分

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