今季史上最多となる4度目のフリーエージェント(FA)権を取得した中日谷繁元信捕手(38)が11日、チーム残留の意向を球団側に伝えた。ここまで去就について明言を避けてきたが、打倒巨人への思いを再確認し、権利を行使しないで残留することを決断した。来年12月で40歳を迎えるが、今後の契約交渉では球団から複数年契約を提示される可能性もある。竜の扇の要は、来季も正捕手としてG倒のテーマに挑む。

 谷繁が中日残留を決断した。ここまで去就に対する態度を保留してきたが、この日午前に球団側に電話連絡を入れ、意向を伝えた。「FA宣言せずに残留するつもりです。球団から、必要な戦力であるし残ってくれ、という言葉をもらった。それで気持ちが固まった」。決め手は中日愛。交渉はこれからだが契約内容は大きな問題ではなかった。

 谷繁が心を決めたもう1つの要因が、打倒巨人への思いだった。「今年も去年も一昨年も巨人に負けて(レギュラーシーズンが)終わった。そういう巨人を来年は倒したいと思ったんです。このチームで倒したい、と」。ここ3年連続して2位に甘んじ、いずれも巨人に優勝を許した。今季も12ゲーム差をつけられ、クライマックスシリーズ(CS)でもたたきのめされた。CS前にはあえて「巨人を倒して日本一になりたい」と話しており、果たせないままFA市場に飛び出すことはできなかった。

 谷繁にとって、打倒巨人はプロ野球生活の大きなテーマだ。88年ドラフト1位で大洋(現横浜)に入団してから、常に華やかさと強さの象徴として立ちはだかったのが巨人だった。21年間のプロ生活を通し、宿敵にぶつかっていくことで自らの存在を際立たせてきた。巨人に対抗する1番手に挙げられる中日で、雪辱を果たしたい。そんな思いに背中を後押しされた。

 ささやかな目標も封印した。FA権取得は史上初の4度目となるが、開幕前は自らを鼓舞する意味で「権利行使が目標」と話していた。だが中日に残ると決めた以上、他球団の評価を聞く必要はない。「ホント言うと、宣言する、しないは、今年は周りに言われるほど意識していなかった」。もはや権利行使は意味をもたず、宣言を取りやめた。

 G倒、そしてV奪回が史上命題のチームにとって、欠かせないパーツがピタリはまった。今季も正捕手として115試合に出場。開幕直後に右ふくらはぎ肉離れで3週間離脱したが、その後はフル稼働している。投手陣をリーグ2位の防御率3・17に導き、捕手として史上2人目となる無失策でのゴールデングラブ賞に選出された。来年12月には不惑を迎える22年目の男が、落合竜の守りの野球を取り仕切る。【村野

 森】

 [2009年11月12日10時51分

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