<阪神5-4巨人>◇6日◇甲子園

 これが「伝統の一戦」が積み重ねた歴史の重さだ。阪神の4番金本知憲外野手(42)がメモリアルだらけの1発で3連覇中の王者巨人に土をつけた。本拠地甲子園の開幕戦で飛び出した2号2ラン。長嶋茂雄氏に並ぶ通算444号は阪神移籍後200本目で、42歳になって初アーチ。右肩痛で不本意な打撃しかできない複雑な思いもあったのだろう、珍しく両手のこぶしを握りながらダイヤモンドを1周した。

 自然と“禁”が解かれた。「相手に失礼」と普段は封印している試合中のガッツポーズ。グラウンド上で感情を表に出さない男が、このときばかりはあふれる思いを抑えきれなかった。伝統の一戦で放った、ミスタープロ野球に並ぶ一発。アニキは一塁ベースを回ると、両拳を強く握りしめ、小さくガッツポーズした。

 同点の6回だ。1死一塁で、記念のアーチが出た。肩口から入ってきたスライダーをとらえると、打球は虎党の大声援にも乗って、右中間席最前列に飛び込んだ。今季2号の決勝2ラン。「ガッツポーズじゃないよ。ヨッシャや」。試合中、広報を通じて出したコメントでは照れ隠しのようにおどけた。開幕勝利にわく本拠地のお立ち台まで、興奮が続いていた。

 金本

 初の甲子園で、しかも相手が巨人。2倍、3倍うれしい。(ガッツポーズは)あまりやる方ではないけど、どうしても勝ちたいという気持ちが自然と出た。ホント、恐縮というか、まさか長嶋さんと並んでいるなんて、ちょっと考えられません。

 満面のアニキスマイルを浮かべながら、思いのたけを熱狂する虎党に届けた。この1発は長嶋氏の通算本塁打に並んだだけではなく、阪神に移籍後の200号。2球団に渡って200本塁打を記録した上に、42歳となっての初本塁打になった。

 この日の試合前練習。金本の調整には明らかな変化があった。開幕2カード目から続いた広島、中日との遠征では、打撃練習で普段使用するマスコットバットを握らず、試合用バットで打撃練習に励んだ。満足に思い描くフルスイングができない。ならば試合で全力を出し切る。前の一週間で“安静”に努めた肩に回復の兆しが訪れたのか…この日の練習では1キロのマスコットバットをフルスイングし、快音を響かせた。和田打撃コーチも「(右肩は)日増しによくなっている。それだけじゃないかもだが(全力で)振れるくらいになってきた」と復調を感じ取っていた。

 一時は洋服に袖を通す時でさえ、右肩に痛みが走っていた。そんな極限状態の中でも戦い続け、ここ一番で結果を出す。その積み重ねが「鉄人」アニキの礎となっている。「できれば445本目も巨人戦で打てればいいと思う」。最後に飛び出た“予告ホームラン”。4万6306人の虎党は最後まで、感情をむき出しにした千両役者の言葉に酔いしれた。【石田泰隆】

 [2010年4月7日11時32分

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