<楽天6-1オリックス>◇10日◇Kスタ宮城

 楽天岩隈久志投手(28)らしい10年1勝だった。ゴロアウト12で奪三振が2。前日8得点の好調オリックス打線を、嶋とのコンビで「テンポよく」あざ笑った。先週の8失点KOとは別人だったエース。楽天は借金を再び4とした。

 ゲームの潮目を的確に読んだ。打率、本塁打でリーグトップの4番カブレラ。「前に走者を出さないように」ケアした上で、ウイークポイントの高めを「思い切って」突いた。3度の対戦全17球中、実に高め11球。内外角いっぱいに制球し、フォークとの落差を最大限に生かし、単打1本に封じて打線を寸断した。失投が即、本塁打のリスクに直結する高め勝負。勇気と制球力がなければできない料理法だった。

 コントロールの源は自身のルーツにあった。楽天投手陣の中で最も制球力が高いのは岩隈、は定説。だが「左投げでも」となるとチーム外に知る人は少ない。元来左利き、は意外な事実だ。岩隈は「バランス」という言葉を常日ごろ口にし、調整上最も重要視している。エースにとってのバランスとは「左右対称」を意味することは、1枚の写真が物語っている。フィニッシュまで顔が全く傾かず、地面と平行のまま、両目でミットを見つめている。

 登板前日80メートル、当日でも60メートルの遠投を、30分間もかけ行う。「バランスを入念に確認するのです。この1週間も調整は変えずに。(気持ちの)切り替えだけ」と岩隈は言う。両目でミットをとらえ制球する技術は、天賦の才に地道な努力を重ねて得た産物だった。お立ち台でも正面をキッと見つめたエース。「始まったばかり。テッペン目指して、みんなで頑張りましょう」と結んだ。【宮下敬至】

 [2010年4月11日9時15分

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