<阪神7-3ヤクルト>◇11日◇甲子園

 えっ?

 ウソ、やっぱり!

 阪神金本知憲外野手(42)がミスター超えの445号とダメ押し適時打で勝利をもたらせた。初回2死二塁、アニキの打球は左翼ポール際へ。1度は二塁打となったが、ちょっと待てよ…。ポールに当たってまっせ!

 真弓監督の抗議もあって、ビデオ判定の結果、2ランに覆った。あこがれの長嶋茂雄を超える1発は劇的な?

 メモリアルアーチ。今季初の4打点でチームも借金を完済した。さあ、13日からは敵地に乗り込んで巨人戦だ。

 どんな形であこがれの存在を超えるのだろうか?

 誰にも分からない「答え」が用意されていた。金本が描いた445本目の放物線はあまりにもドラマチックだった。インプレーによる二塁打がビデオ判定で覆った。これが長嶋氏の通算本塁打を超えた瞬間だ。「長嶋さんを超えたのは、ホームランだけ。とても追いつくような人じゃない。でも、とにかくホームランを超えたのは、うれしい」。満員のファンの祝福を受けて、素直な気持ちがあふれ出た。

 ミスターは比べようのない存在感だが、金本が持つスター性も圧倒的だ。1回裏2死二塁。ヤクルトの左腕村中の高め直球を強振。打球は左翼へと舞い上がる。ポールに備えつくネットにぶつかって、落下したのだが、審判は本塁打と認めず、インプレーと判断。先制点は入ったが、金本は二塁ベース付近で、両手を広げて「入っていないの?」のジェスチャーだ。

 金本

 ヤクルトの選手もホームランのような顔をしているように思っていた。早くビデオを見てくれないかな、と思っていた。

 真弓監督がベンチを飛び出し、審判に抗議。最初は「はっきりと見えているから」と異議を却下され、1度は戻りかけたが、ベンチや二塁ベース上の金本のアピールにも促され、ビデオ判定を要求。審判団が協議し、ネット裏のビデオを確認。その結果、判定が本塁打に覆った。「1点よりも2点のほうがいい。監督が抗議してくれて、覆って良かった」。審判が右手をグルグル回すと、主役は両手をグッと握りしめ、満面の笑みでホームに向かった。あまりにも珍しいメモリアル弾となった。

 7回にもうれしい快音が待っていた。2死満塁のチャンスで、金本が右前に2点タイムリーを放った。「やっと集中力とか速いボールに対処できるようになった。どんどん調子を上げていきたい。自分たちの戦い方は打って打って打ちまくって、投手を助けるチーム方針がある。打ちまくりたいです」。右肩痛に悩まされてきた主砲に、全快宣言が飛び出した。これまで終盤の追加点が見られなかったチームにとっても、大きな1本だ。

 5球団との対戦が一巡し、7勝7敗で勝率5割に終わった。開幕ダッシュは不発だったが、打線は本来の力を発揮しつつある。真弓監督は言った。「チームの戦い方は見えてきた。巨人に負け越しているし、取り返しにいく」。攻撃的なスタイルで戦い抜く-、その決意が固まった試合でもある。あす13日からは、敵地で巨人3連戦。真弓阪神の逆襲が東京ドームから始まる。【田口真一郎】

 [2010年4月12日10時16分

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