<佐井注目>
飛び出してしまった二塁走者を責める気持ちには、とてもなれなかった。
18日の甲子園ヤクルト戦。阪神梅野隆太郎がまたも「曲芸」を披露した。
1回表2死二塁、ジェレミー・ビーズリーが3ボール2ストライクから投じた7球目。4番村上宗隆が構えた左打席の数10センチ手前にたたきつけられたフォークを、巧みにハーフバウンドでキャッチしたのだ。
両足を瞬時に動かし、腰のあたりから逆シングルで肩口まですくい上げる。二塁走者・長岡秀樹の飛び出しを確認すると、冷静に二塁送球してタッチアウトをもぎ取った。
今季1軍初登板だったビーズリーを落ち着かせるビッグプレー。助っ人右腕は「オーマイガー! あんなプレー見たことない!」と驚いていたという。長岡も完全捕球されるとは夢にも思わなかったのだろう。
他の追随を許さないハンドリング技術。なぜ捕れるのか? 以前、素朴な疑問をぶつけたことがある。
かつてはランディ・メッセンジャーや藤浪晋太郎(現メッツ)の暴れ球をいとも簡単にすくい上げてきた。その極意を尋ねると、梅野は「遊び心、ですかね」とニヤリ笑っていた。
「自分は内野ノック中に遊び心を持って逆シングルキャッチを練習することも大事にしているんです。ノックの打球は簡単に跳ね方を予測できない。『あっマズい』と思った時にボールを長く見るのか、それとも前に出るのか。そういった具合に捕球のタイミングを練習するわけです」
きっかけは恩師の言葉だった。
プロ1、2年目の2月、梅野は1軍沖縄キャンプでサブグラウンドに残り、山田勝彦バッテリーコーチ(現日本ハム・バッテリーコーチ)のノックを受け続けていた。突き指を避けるため、利き手の右手には手袋を装着。地道な特守の目的は下半身強化だけではなかったそうだ。
「あれは山田さんから『遊びながらでいいから』と言われて、とにかくハンドリング、ボールをつかみ取る技術を練習していたんです。当時は『なんでこんなにノックばかり』とも思いましたけど、あの練習からコツをつかんだ部分はあったと思います」
梅野は今、恩師の教えに心の底から感謝している。
「上からいかず下から取りにいく感覚。『心眼』と言われる、ボールを見なくても捕球できる感覚。置きたい場所にミットを持っていく感覚。今思えば、本当にありがたい練習をさせてもらったと思います」
“神ハンドリング”は一日にして成らず。そんな当たり前の事実に気づかされると、1つ1つのプレーを見る目がまた変わってくる。【野球デスク=佐井陽介】




