日本ハムが、キーマンを「シカト作戦」の普段着野球で虎退治に臨むことになった。12日の阪神戦(甲子園)で交流戦が開幕。セ・リーグ2位の好調さを支える1人が、今季の戦力の城島健司捕手(33)だ。独特なリードが特長だが、試合直前のミーティングで徹底分析をしない方針。打者の反応を見て即興で投球を組み立てるケースもあるため、事前の戦略は無用との結論を出した。打者の頭脳、力量に任せる最善策で揺さぶりをかける。

 豪快に「城島」の名前を消す大胆策へ打って出る。日本ハムは12日の試合前、神戸市内の宿舎で阪神2連戦へ向けたミーティングを、バッテリーと野手に分かれて実施。相手投手と捕手の傾向と戦略を練る野手部門のいくつかのテーマから、城島のリードを排除することになった。

 明確な狙いから、あえて無視することに決めた。城島の高校の先輩で、現役時代にも対戦した石本チーフプロスカウトはこう説明する。「奇抜な配球をしてきたりする。打者の動きとか反応を見て、球種を変えたりとか、洞察力がすごい」。想定と違う投球パターンをされたケースで、事前情報にとらわれ、打者の本来の力が出せないリスクの方を重要視した。

 打者対捕手の1対1の真っ向勝負を最大の戦略に設定できる根拠もある。5年ぶりに日本球界復帰した扇の要との対戦経験だ。ダイエー時代からしのぎを削ってきた金子誠内野手(34)は「ここで、こうくるか、みたいなリードをしてくる」と当時を回想した。打者個々にインプットされている情報があり、最低限の準備は完了。個々の力を結集しての打開が、白星の近道になる。

 もちろん打者としての城島は徹底分析するが、捕手としては型にはめず、攻略の糸口を探す。リードオフマン田中賢介内野手(28)は「打たれてもいいみたいな『捨て打席』みたいなことをやってくる。次の打席、次の試合とかでやり返しくるとか」と、早くも“個人予習”の成果の一端を明かした。

 最下位から巻き返しへの試金石になる交流戦、阪神との敵地2連戦がスタートする。「(昨季とは)まったく別のチームみたい。城島が入ったのも大きいんやろうね」。梨田昌孝監督(56)がこう挙げたキーマン崩しへ、野手1人1人の英知を絞った独創性で勝負する。【高山通史】

 [2010年5月12日11時2分

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