まさか、球児が…。阪神藤川球児投手(29)がロッテ戦で井口にサヨナラアーチを浴びた。サヨナラ被弾はプロ2度目。リリーフ陣が劣勢の中で必死につなぎ、9回執念の攻撃で同点に追いついたが、延長10回に守護神がつかまった。チームの交流戦勝率5割フィニッシュも幻となった。18日に再開されるセ・リーグとの戦いに向け、切り替えるしかない。

 ガッツポーズの井口を横目に、藤川はくちびるをかんだ。延長10回。虎の終戦を告げるサヨナラ弾が右翼席に弾んだ。「抑えなあかんかったけど…。1点取られたら負けやから」。高めに浮いた初球、151キロ真っすぐ。この瞬間、3年ぶりの交流戦勝ち越しが幻となり、今季最多の貯金8と真弓監督の通算100勝がお預けとなった。今季チーム最長4時間51分の激闘の末に、悲しい結末が待っていた。

 何としても勝ちたかった交流戦最終戦。真弓監督の執念采配を意気に感じていた。最大5点のビハインドを追いついた9回の裏。渡辺が1死一、二塁のピンチを招くと、サヨナラ阻止の登板指令が下った。「球が走っていた」。気迫十分、最速152キロで11球、オール真っすぐ勝負を挑み、南、西岡を連続で空振り三振に仕留めた。球児の真骨頂が凝縮されたマウンドがあればこそ、10回があった。

 「しゃあないよ。打たれる時もある」。藤川も懸命に切り替えた。真弓監督も責めることはなかった。「しょうがない。その前のピンチを切り抜けてくれたんやから」。11日の移動日をはさんで3連投。そして昨年10度に対し、今季はや8度目のイニングまたぎ。疲労もあっただろう。そもそもスタンリッジが自滅し、2番手上園も痛打され、林の失策などで8点を失っていた“負けゲーム”。藤川1人の責任ではなく、ベンチにも藤川がやられたら仕方ないのムードが漂った。

 勝っていればセリーグで唯一、交流戦勝ち越しチームになれた。だが真弓監督は前向きだった。序盤で大量リードされてもあきらめなかった。「貯金したかったけどね。でも交流戦前は(投打で)チームが乗れず、戦いをどうするか難しい所もあった。でも今はチームに勢いが出てきている。レギュラーシーズンにつなげていきたい」。上り調子の手応えを得て、再開するリーグ戦に臨めるのは大きな収穫。首位巨人を3差の射程圏にとらえ、もう1度追撃体勢を整える。

 [2010年6月14日11時45分

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