<巨人6-2阪神>◇3日◇東京ドーム
巨人が緊急事態を乗り越えて首位を奪回した。阪神との首位攻防戦初戦の2回、先発のセス・グライシンガー投手(35)が右すねに打球を受けて15球で降板するピンチを、スクランブル登板の野間口貴彦投手(27)が救った。走者を許しながらも自らの好守もあって4回無失点に抑え、勝利に導いた。この日に出場選手登録をされたばかりだったが、緊急時に強い本領を決戦で発揮した。
突然の出番だった。2回無死、先発グライシンガーが右足に打球を受け、わずか15球で降板。緊急事態の中、原監督から後を託されたのは野間口だった。「監督に『全力で投げて来い』と声を掛けてもらい、すべてのボールに気持ちを込めて投げた」。ブルペンでは冷静に肩をつくり、指揮官の言葉に、アドレナリン全開でマウンドに上がった。
登板前に襲ってきた不安と重圧。マウンドに上がれば、自然と無心になれた。先頭の金本を一ゴロで1死。続く、城島は三ゴロ併殺に仕留めた。「いろいろ考えてしまう性格なので、何も考えずにいこうと。不安はありましたが、マウンドにいけば思い切っていけた。ピッチング自体はいいものではなかったですが」。全力で腕を振り、4回を無失点に抑えた。
毎回走者を背負ったが、心は熱く、頭は冷静だった。5回1死二、三塁、足元へ飛んできたライナーを反射的に捕球。素早く体勢を立て直し、三塁へ送球した。3つめの併殺をとった。「思ったよりボールが見えていたんで、体に当ててでも止めてやろうと。捕ってからは冷静に判断できた」。3回無死一塁では、投前へのバントを猛チャージで併殺。自らの守備で失点を防いだ。
心に残る恩師の言葉がある。社会人のシダックス時代、野村克也監督(現楽天名誉監督)から「競っている試合の方が向いている」と言われた。07年は後半戦のローテの谷間を埋め、17日間で4勝。当時の姿をほうふつとさせる快投に「こういう方(緊急登板)が向いているかもしれないですね」と、2年ぶりの白星を笑顔で振り返った。
どん底からの復活劇だった。6、7月の2軍戦、大量失点でKOされた。プロ入り最大の屈辱。「ファームでここまでやられたのは初めて。心のイップスだよ」と落ち込んだ。自分を変えることが、復活への1歩だった。2軍での練習中、若手選手に交じり、100%の力でダッシュを繰り返した。鬼気迫る表情で「何かを変えなくちゃいけない。ぶっ倒れるまで体をいじめる」と真顔で言った。
自宅に帰れば、プレーボールに合わせ、テレビのスイッチを入れた。「投げ方が分からないんだよ。昔は何も考えずに投げられたのに。1軍の投手のフォームを見て、勉強するよ」。食い入るように、映像を目に焼き付け、フォーム修正に励んだ。
昨年、シーズン終盤戦の鍵を問われた原監督はこう話したことがある。「これからの試合は予想外の選手の活躍が必要になってくる。ヒーローがパッと出てきたり、神業的なプレーが出たりすれば、チームに勢いがつく」。この日見せた野間口の活躍は、まさにそうだった。阪神に0・5ゲーム差をつけ、首位を奪回した。「これからチームにどんどん貢献していきたい」。救世主の出現で、一気に勢いに乗る。【久保賢吾】
[2010年8月4日8時30分
紙面から]ソーシャルブックマーク



