だめなら引退だった-。7日阪神戦(ナゴヤドーム)で今季初登板初勝利を挙げ、23年連続勝利のプロ野球タイ記録をつくった中日山本昌投手(44)が自身の進退について激白した。阪神戦で結果が出なければ、引退を決意していたことを明かし、また、来季現役続行の条件として、今季終了までローテーションに入り、クライマックスシリーズまで戦力になるというノルマを自身に課した。

 8月7日阪神戦、44歳の山本昌は6回1失点の好投で、今季初勝利を挙げた。進退をかけたシーズンで苦しみながら挙げた1勝に200勝左腕が思わず涙した。その姿は23年連続勝利のプロ野球タイ記録とともに多くのファンにインパクトを与えた。その余韻がまだ冷めやらない中、本人は周囲の想像以上の覚悟を抱いていたことを明かした。

 山本昌

 結果が出てよかった。でも、あの試合でKOされて2軍落ちしていたら、引退しようと思っていた。試合後にこれまでお世話になった人たちに電話していたと思う。そして、今ごろ、引退発表の文章を考えていたと思うよ。

 野球人生をかけて臨んだ阪神下柳との40代対決で、下柳以上の若々しい投球を披露。強力打線を直球でつまらせた。最速は138キロだったが、球のキレと制球に衰えはなかった。内容と結果から引退危機は脱出したかに見える。だが、本人は首を横に振り、現役続行のノルマを自らに課した。

 山本昌

 まだまだ。半歩前進しただけだよ。単発じゃだめ。これを何回も続けないといけない。最低でも今年の最後までローテーションに入って、クライマックスで投げられなければいけないと思っている。

 CSでの登板は相手との相性も関係してくるが、山本昌は現役続行の最低条件として今季終了までローテーションを守り、プレーオフでも1軍の戦力でいることを挙げた。強力先発陣の競争は激しいが、あえて厳しいノルマを課した。常に先発の中心として投げ続けてきた男ならではの、意地とプライドがにじんだ。

 山本昌

 (引退は)自分で決めるものとは思っていない。まわりの人に「あんな成績でまだやっているの」と思われたくない。僕にもプライドがあるから。やっぱり、年間通して投げたら10勝はするんだなという力を証明できないといけない。内容はもちろんだけど、やっぱり結果を残さないと。最後は数字でしか評価されないからね。今年は3勝から5勝?

 そうだね。そのくらいは勝たないといけないと思っている。

 次回先発が予想されるのは45歳の誕生日(11日)を迎えた直後の14日広島戦。打たれて、2軍落ちとなれば一気に引退の瀬戸際に追い込まれる。今季、残り42試合で最低あと2勝が必要だ。通算206勝のベテラン左腕は次もまた、背水の覚悟でマウンドに立つ。

 [2010年8月10日10時44分

 紙面から]ソーシャルブックマーク