<広島5-14ヤクルト>◇18日◇マツダスタジアム

 連敗阻止に向け、ヤクルト打線が大爆発した。初回、畠山和洋内野手(27)がプロデビュー戦の広島今村から満塁弾。5回まで毎回得点となる大量12点を挙げた。投げてはエースの石川が大量点に守られて完投勝ち。チームの連敗を3で止めた。

 勝っても負けても朗らかな表情の小川淳司監督代行(52)だが、いつになく温和な表情になった。10連勝のあと、3連敗していただけに「連敗が止まったんで…。頑張ります」とボソボソ。声は小さいが、どんなときも謙虚な言葉を並べ、ていねいな受け答えをする人のいい“ヤクルトおじさん”。しかし、球界では異例ともいえる癒やし系の監督が、確実にチームを変えていた。

 自分のミスは素直に認め、改める“小川流”が、チームを強くしている。前日の試合は痛恨のサヨナラ負けだった。ベンチから指示を徹底させるチーム方針が裏目に出ての負けだった。「これからはベンチの指示だけでなく、臨機応変に変えなければいけないところは変えてもいい。もっと細かく指示が出せるようにしよう」と方向転換。自分の落ち度を認める勇気と、いいと思えば素直に方針を変える度胸もある。進言しやすい人柄もあり、若いコーチ陣にもやる気がみなぎるようになった。

 オールスターでも、1歳年下の原監督に選手の起用法や作戦面などの「采配術」を質問攻め。つまらないプライドより、自分自身の向上心が上回っている。謙虚さだけでなく、巨人に3連勝し、原監督の態度や行動をつぶさに観察し、ひそかにほくそ笑むしたたかさも兼備。50勝の大台に乗せ、借金返済まで3にまでチームを押し上げた。優しいだけの“ヤクルトおじさん”ではなかった。【小島信行】

 [2010年8月19日8時23分

 紙面から]ソーシャルブックマーク