<日本ハム0-1ソフトバンク>◇25日◇札幌ドーム

 震えるまぶたにどれだけ力を入れても、止められなかった。ソフトバンク杉内俊哉投手(29)が泣いた。うつむき、ほおを赤く染め、ヒーローインタビューで涙をこぼした。「ここ4試合が、ホントにふがいない投球だったので…」。あとは言葉にならない。10秒以上の沈黙の後、ようやく「最高です」と声を振り絞った。

 デーゲームで西武が勝ったため、敗れれば首位陥落とマジック消滅の危機だった。相手は11日に投げ負けたダルビッシュ。「最初から飛ばしていった。5回で(マウンドを)降りてもいいと思った」。2回は先頭小谷野に左翼ポール上方への大ファウル。ビデオ判定でもファウルと判定され、失点は逃れた。

 7回に待望の先制点が入ると、両手を広げて喜びを爆発させた。8回を3者凡退に抑えると、体を「く」の字に折り曲げてほえた。1点リードの最終9回には1死一、二塁のピンチを招いたが、最後は糸井を外角のスライダーで併殺に仕留めた。「いや~、しびれたね」。ウイニングボールをつかんだ小久保と抱き合い、歓喜に全身をゆだねた。

 8月21日の楽天戦を最後に白星から遠ざかった。「(原因が)分からない」と、寝付けない夜もあった。答えが見え始めたのは20日の西武戦。登板2日後の休日を利用して家族とスタンドから観戦した。先発ホールトンがKOされながら、投手5人の継投で白星をつかんだ試合。“1人の観客”としてグラウンドを見下ろし、考えすぎていた自分に気付いた。「今日は何も考えず、無心で投げた。最後にこういう投球ができて良かった。マジック1になったので、明日はみんなに託して応援します」。今度はうつむかず、声を大にして泣く。【太田尚樹】

 [2010年9月26日8時33分

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