ソフトバンクが来季2軍投手コーチとして、球団OBで野球評論家の加藤伸一氏(45)を招聘(しょうへい)することが20日、分かった。関係者が明かした。現役時代シュートを武器に強気の投球を演じた加藤氏に託されるのは、チームの泣きどころである右のエースの育成。右肩故障で3年間登板なく、来季後半の1軍登板を目指す斉藤和巳投手(32)を再生させる役割も担う。CS敗退から一夜明け、日本一への戦いがスタートした。

 「エース斉藤再生」と「斉藤2世育成」。ソフトバンクの2つの命題が、加藤氏に託された。この日までに球団は加藤氏に2軍投手コーチ就任を要請した。受託に支障はなく、入閣が決定的。杉内、和田のWエースを筆頭に左腕先発投手が充実するチームにあって、右の先発の柱を1軍に送り出す大仕事を担う。

 栄光もどん底も知る経験が、加藤氏のバックボーンだ。83年ドラフト1位で南海入団。ルーキーイヤーの84年から1軍で33試合登板と活躍した。だが、順調な現役生活に暗雲が立ちこめたのは90年。右肩故障で1軍登板なし。92、93年もケガに泣いた。95年も右肩痛に悩むとダイエーに戦力外通告。それでも、あきらめなかった。96年、広島に拾われる格好となった加藤氏は、恩を返そうと奮闘。25試合で9勝を挙げ、カムバック賞を手にした。

 98年には8勝をマークしたが、チーム若返りをはかる広島を自由契約となった。オリックスで3年プレーし、FA移籍で02年近鉄に。度重なる右肩負傷に悩みながら、マウンドへの執着心を忘れなかった姿は、右肩故障からの復活を目指すエース斉藤に重なる。斉藤は現在、育成選手としての契約を含めた条項を打診されている中、来季夏場以降の1軍復帰を目指して地道な練習に取り組んでいる。評論家としてグラウンドの外から野球を見てきた加藤氏の指導は、大きなプラスになるに違いない。

 シュートを武器とした闘争心あふれる投球スタイルも、球団が斉藤2世育成を託した理由の一つ。07年大学・社会人ドラフト1巡目の大場や高校生ドラフト1巡目の岩崎、08年度1巡目の巽らの伸び悩みが、現チームの課題。変化球を投げる際に腕のスピードが落ちる悪癖解消へ、強気のピッチングをたたき込んでいくはずだ。09年度ドラフト3巡目で獲得した下沖の育成にも注目が集まる。杉内、和田、大隣、陽耀勲、山田、小椋ら左腕がずらり並ぶ先発陣に、右の柱が加われば、リーグ連覇と悲願の日本一に大きく近づく。

 現役引退後のコーチ歴はなく、今回が初めて。フレッシュな指導に、注目が集まる。

 [2010年10月21日11時36分

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