中日落合博満監督(57)が、優勝旅行先のハワイから中部国際空港到着のチャーター便で帰国した。球団史上初の連覇を狙う指揮官は来季の指導方針として「ほめない」を掲げた。今年2月のキャンプ中に自らが絶賛した新助っ人ディオニス・セサル外野手(34)が不振のまま退団したこともあり、来季は選手をめったにほめないことを心に誓った。

 リーグ優勝のご褒美であるハワイ旅行も終わった。プロの世界で生きる男たちにとって勝利の余韻に浸れるのはここまで。これを区切りに来季への戦いが幕を開ける。そこで、落合監督は戦いの大前提とも言える指導方針を自ら見直す考えを披露した。

 「今年はちょっとほめすぎたな。キャンプ中、セサルをほめただろう?

 あれから、おかしくなってしまった。日本の野球に合わせようとしすぎたんだ。普段ほめない人間がほめるとろくなことがない。来年はほめないよ」。

 落合監督には今季、反省している場面がある。2月のキャンプで新外国人セサルを絶賛したことだ。ボールをぎりぎりまで引きつけて、確実に跳ね返す打撃技術を披露したセサルに対して、指揮官は「おまえは今までやってきた外国人選手の中で一番、質が高い」とほめたのだ。

 本人もご満悦だったが、この後からセサルの打撃が崩れていった。オープン戦では日本のストライクゾーン、日本人投手の変化球に対応しようとするあまりバットが出なくなった。結局最後までキャンプで見せた自分の打撃を取り戻すことなく、51試合で打率2割1分5厘、1本塁打、10打点という成績で退団した。

 「本当にいい打撃をしていたんだ。いいものは持っていただけにな…」。

 落合監督は本来、めったに他人をほめるようなタイプではない。選手に対する要求のレベルが高く、試合後のコメントでも勝利の立役者を手放しでほめることはない。むしろ、さらに上の働きを要求することが多い。それだけにほめられた時の相手の反応は予想以上に大きいようだ。

 くしくも来季の新外国人選手として、ブランコを上回る怪力自慢のジョエル・グズマン内野手(26=ドミニカ共和国)獲得の正式発表が目前に迫っている。この新戦力をはじめとして、すべての選手に対して本来のキャラクターを貫くつもりだ。時には厳しすぎると感じるかもしれない。それでも、悲願の連覇のために、落合監督はあえて鬼の仮面をつける。【鈴木忠平】

 [2010年12月20日11時3分

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