ドラ1大野が吉見になる-。中日の新人合同自主トレが11日、ナゴヤ球場で始まり、ドラフト1位大野雄大投手(22=佛教大)ら新人5人が参加した。左肩に不安を抱える大野はキャッチボールも満足にできず、実質ノースローとマイナスからのスタートとなった。春季キャンプも2軍スタートが濃厚だが、同じ2軍スタートからエースに上りつめ、最多勝も獲得した吉見一起(26)の出世物語を再現する。

 注目の大型左腕はふわりと山なりの球でのキャッチボールしかできなかった。隣では、3位武藤と5位関が伸びのある球を投げ合った。距離も延ばし、立ち投げ同然の“投球”まで披露した。対照的に大野は、塁間に満たない約20メートル程度しか距離を取れずに終了。屋内練習場でのゴロ捕球のメニューも、捕球後は下手投げでコロコロと球を転がして返した。初日は、実質ノースローで終了した。

 大野

 塁間までの距離で、これからも様子を見ます。そんなに強く、離れた距離を投げることはしばらくない。今は1日も早く(左肩を)治してマウンドに上がりたい気持ちでいっぱいです。

 マイナスからのスタートだ。昨秋「左肩棘下筋(きょっかきん)炎症」を発症し、大学最後のシーズンはリーグ戦登板ゼロに終わった。「もう痛みはない」というが左肩に不安を抱えている。

 状況を把握した上で獲得を決めた中田スカウト部長はこの日「無理に投げなくてもいいと、言ってある。キャンプでも(投球は)難しいだろう」。指導した三木トレーニングコーチも「故障明けだし、まずは足元を固めることから。スタートラインに立てるような状態じゃない」。キャンプは2軍スタートが濃厚だ。

 ただ、身近に「お手本」がいる。右のエース吉見は希望枠(当時)と、大野と同じ最高評価で入団したが、04年末に右ひじ手術を受けたことなどからルーキーイヤーの06年はキャンプ2軍スタート。1歩1歩力をつけ、09年に最多勝を獲得した。将来的な目標としてシーズン15勝&沢村賞を獲得を公言している大野も、同じ道のりを歩む。

 91年ドラフト1位で入団した落合英二氏も右ひじ手術で1年目を棒に振ったが長く活躍した。元気な同期4人を横目に大野は、はやる気持ちを必死に抑える。

 大野

 あいつらは調子次第で1軍デビューの可能性もある。でも、ボクは今、ボールを放れるかどうかが勝負。出遅れている。

 吉見さんになる-。スタートで出遅れても将来的に巻き返す潜在能力が、大野にはある。ここを右肩上がりのプロ生活の出発点とする。【八反誠】

 [2011年1月12日11時28分

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