球界の功労者をたたえる「野球殿堂入り」が14日、野球体育博物館(東京ドーム内)で発表された。エキスパート部門では「最後の30勝投手」(68年)である故皆川睦雄氏が選ばれた。殿堂入りはこれで173人となった。

 皆川氏の真智子夫人は、喜びの涙を浮かべた。「2月で七回忌になります。こんな素晴らしい賞を頂けて…今日は帰ったら主人に報告させてもらいます」。皆川氏はサイドスローで通算221勝を挙げ、南海の黄金時代を支えた。68年には31勝をマークした。以後、30勝投手は現れていない。輝かしい実績ながら、同夫人は謙虚な故人の思い出を語った。

 「主人はいつも、オレがあるのは野村さん(克也氏)のおかげと言っていました。練習は、野村さんのサインに忠実に投げるためにやるんだと」。会場まで駆けつけた野村氏に頭を下げながら「そんな野村さんに今日も来ていただき、本当に幸せです」と、涙をぬぐった。

 同期入団の野村氏は「皆川はカットボールの先駆者。当時はちっちゃいスライダーと呼んでいたけど、もっと、その功績をたたえてほしいな」と語った。左打者を苦にしていた皆川氏にカットの習得を勧めたところ、逆に左打者が得意になったという。「本人から直接『ノムやんのおかげだ』と言ってもらったのはうれしかった」。ただ、晴れの席に本人がおらず「あの世で喜んでいるだろうけど…生きている間になあ」と、さびしそうに話していた。【飯島智則】

 [2011年1月15日8時59分

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