巨人ドラフト1位の沢村拓一投手(22=中大)が、近い将来の160キロ超えを予感させる強烈なデビューを飾った。29日、宮崎市内での合同自主トレで、プロ入り後初のブルペン入り。投手陣だけでなく野手陣も見守る中、立ち投げで直球を28球投げると、室内練習場にはひときわ大きな捕球音が響いた。ボールを受けた柳(リュ)ブルペン捕手は、昨季まで在籍した最速162キロのマーク・クルーン投手よりボールの回転がいいと証言。最速157キロ右腕は、改めて同僚やチーム関係者の度肝を抜いた。

 午前11時11分、沢村が室内練習場のブルペンに静かに足を踏み入れた。ネット裏に足を運んだ内海を筆頭に、久保、東野ら1軍投手陣が練習の傍ら、ルーキーの“デビュー”に注目した。一瞬の静寂の後、強烈な捕球音が室内練習場に響く。「7割くらいの力で投げました。若干力んでしまいましたが、いい緊張感の中で投げられて良かったです」。周囲がざわつく中、冷静に振り返った。

 投げるごとに響く乾いたミット音に、選手が次々と目を奪われていく。ティー打撃中だった坂本は、わざわざ振り返って球筋を確認。脇谷、矢野らも足を止めて投球に見入った。中大の先輩でもある阿部は、柳ブルペン捕手の背後に立って2球見た後、21球目からの8球を捕球した。「球に力があると思う」と、ミットから伝わってきたボールの威力を認めた。

 坂本ら選手は「速いです」と口をそろえたが、ボールを受けた韓国出身の柳ブルペン捕手が、その威力をさらに生々しく語った。「145キロは優に超えていたと思う。初めて(ボールに)ミットが差し込まれた。真っすぐだけでも怖いと思った」。

 大学時代には、「コリアン・エクスプレス」と評されるメジャー124勝右腕の朴賛浩(現オリックス)と対戦した経験がある柳ブルペン捕手。「受けることと打席に立つのでは見方が違う」と前置きした上で、「大学時代の朴賛浩も150キロを超えていたけど、メジャーにいって、160キロを超えた。沢村も(160キロ超えの)可能性は十分にあるでしょう」と話した。昨季まで巨人に在籍し、このほど大リーグのジャイアンツとマイナー契約を結んだクルーンは最速162キロを誇ったが、「クルーンよりも真っすぐの回転がいいと思う」と証言した。

 周囲から称賛の声が上がる中でも沢村は冷静な目で、課題を明確に示した。「(フォームの)バランスが良くなかった。体重移動した後に、着地した足の位置がバラバラだった」と分析。「今日は途中から抜けたボールもあった。課題はコントロールなので、いいボールの確率を上げていかないと」と反省した。

 初ブルペンで最速157キロの片りんを示したルーキーは、周囲から「マイペース指令」を受けた。阿部からは「まだまだこれからだから焦るな」。内海からは「力はあるんだから、飛ばしすぎないように」と声を掛けられた。「自分を抑えながら、焦らずに自分を持って、調整していきたい」。地に足をつけ、1歩ずつ階段を上がる。【久保賢吾】

 [2011年1月30日8時11分

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