日本ハムのドラフト1位斎藤佑樹投手(22=早大)が10日、プロ入り後初めてフリー打撃に登板した。中田と糸井に対して59球を投げ、ボール球はわずか14球。多くのファン、報道陣が見守る中、緊張したそぶりも見せず、制球力の高さを証明した。周囲の熱気に流されず、淡々とペースを守って投げ続けるなど、強心臓ぶりも見せた。

 本人が最も冷静だった。マウンドに上がると、ファンからの拍手。初めて相対するプロの打者が中田だったことも、周囲の期待感をあおった。異様な空気の中でも、斎藤は自分のペースを貫いた。「基本的には打たせようという感じでした。フォームのバランスと、多少コントロールを意識しました。気持ちよく投げられました」と振り返った。

 テンポが抜群だった。最初の中田は29球、糸井は30球。それぞれ4分ずつの持ち時間の中で、球数は1球しか変わらなかった。斎藤の前に投げた林は同じ時間内で20球台前半だっただけに、テンポの良さが際立った。通常、投手は打球を目で追いがちだが、それもない。中田に大きな打球を飛ばされても、振り向きもしなかった。梨田監督は「ストライクをどんどん取って、テンポが良かった。慣れない人が投げるとストライクが取れないんだけど。実戦向きだな」と高評価した。

 59球を投じ、ボール球は14球しかなかった。「楽しかったです。打たれちゃいけないというのがないので」。マウンドの前には防球ネットが設置され、打者は打撃ケージの中。打たせるために投げるとはいえ、慣れない状況に制球を乱す投手も多いが、斎藤は楽々とストライクを投げ続けた。視察した横浜の松島スコアラーを「コントロールも、テンポもいい。普通テンポが乱れると思うけどね」とうならせた。

 現状の自己分析では「打たせて取るタイプ」。投げるテンポがいいと、野手も守りやすい。「基本的に早め早めにと思っています。運動量として自分に負荷を与えていました」。あえて早めに投げることでスタミナをつける意図もあった。打者糸井の場面で1球だけカーブを投げた。「なんとなく、体がカーブを欲しました」。どんな状況でも、目的遂行に向けてぶれない強さがある。

 注目された中田との再戦について「やはりパワーがあるなと思いました。アウトコースを流して打つあたり、やはりプロだと思いました。心強いですね」。糸井にも本塁打1本を含む6本が安打性の当たり。気持ちよく打たれ、新人としては打撃投手の役目を十分すぎるほど全うした。13日名護での韓国サムスン相手の実戦デビューに向けて、また1歩、確実にステップアップした。【木下大輔】

 [2011年2月11日7時48分

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