<オープン戦:ソフトバンク4-2広島>◇27日◇福岡ヤフードーム

 T砲に待望の一撃!!

 広島の新外国人チャッド・トレーシー内野手(30=マーリンズ)が、来日1号弾をマークした。4回に右翼へオーバーフェンス弾。左腕の杉内から放っただけに価値も高い。これまで低調だった長距離砲に、春が近づいてきた。

 目の覚めるような豪快な軌道だった。白球は右翼席にライナーで一直線。新助っ人の一撃を見届けると、野村監督も上機嫌で声を上ずらせた。「出たよ、出たよ~!

 弾丸ライナー!!

 ホント、ホッとしたよ」。最も収穫を実感していたのが監督だったのだろう。キャンプインから低空飛行が続いていたトレーシーが、ようやく結果を出した。

 野村監督

 練習、キャンプでも見たことがないよ。あれだけカーンと打ってくれたらねえ!

 変化球のあとの真っすぐ。打てて本人も良かったと思うし、そういうものを見せてくれたことが、良かったかな。

 4点を追う4回2死走者なし。マウンド上の一流左腕杉内は外角に変化球を曲げたがバットは動かない。2球目。高め直球を強振すると瞬く間に客席へ。キャンプ開始から実戦6試合で15打数4安打、打率2割6分7厘だったが、ようやくメジャー79発の実力を見せつけた。普段は物静かな助っ人も陽気に言う。

 トレーシー

 まだまだ春の早い段階だけど、あの打席はしっかり打つことができた。久しぶりに真っすぐが来て、この真っすぐを逃したら、次にいつ来るか分からない…。ここ、笑うところだよ!

 (本塁打が)出ないより出てうれしい。シーズン中に出たほうが、ホッとするんだけどね。

 沖縄キャンプからチームに合流し、積極的にナインにとけ込んでいった。特にベテラン石井と練習する機会が多かった。野村監督も「タクローが引っ張ってくれた。彼が走ると『俺も走る』となっていたからね」と助っ人の真面目な姿勢を高く評価していた。一方で、紅白戦など実戦では思い悩んだ。「日本の投手は変化球が多い」と漏らしたこともある。紆余曲折を経て、ようやく対応力も備わってきた。

 トレーシー

 日本の投手はどのカウントでも変化球でストライクを取れるから早いうちにストライクを打っていかないといけない。4番は打ったことがあるし、特別なポジションじゃない。自分は(打順が)どこでも打つ準備をしている。

 あくまでリハーサルでの1発。それでも、大前進という言葉がチームには飛び交ったはず。これまで目立たなかったスラッガーが、存在感を強く示した。【酒井俊作】

 [2011年2月28日10時6分

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