<オープン戦:阪神2-2楽天>◇9日◇甲子園

 けじめをつけて黒土を踏んだ。楽天は9日、阪神とオープン戦を行い引き分けた。星野仙一監督(64)にとって約8年ぶりの甲子園球場での試合。三塁側ベンチに陣取った指揮官は感傷に浸ることなく、シーズン開幕に向け自軍の調整作業に徹した。愛し愛された虎と果たす真の再会は、日本シリーズに取っておく。

 浜風に乗って流れてくる黒土と芝生のにおいを、三塁ベース後方から吸い込んだ。星野監督は、かつて率いたタテジマの練習風景を遠目で見つめた。現役時代から愛し、監督として宙を舞った。「世界一」と認める空間に「感慨深いものはあった」。愛弟子たちが次々と駆け寄ってきた。手を後ろに組み、厳かな表情で軽い会釈を繰り返した。ほんの軽く右手を差し出したのは、下柳ほか数人だけ。8年ぶりの光景にしては簡素極まりなかった。

 試合前、球場内における相手チームとの私語を原則禁じるNPB通達を、米田代表が説明した直後だった。「私からも」と、星野監督は静かに言葉を並べた。

 星野監督

 あいさつをしなくてはならない選手がいることは分かる。だが戦う相手だ。親しくはするな。特にピッチャー。打者と親しくなど、もっての外だ。

 右肩違和感を訴えた内村を前夜、帰した。外野の競争意識を高める狙いでこの日、平石を呼んだ。付いてくる資質のある者だけ残す。シビアにチームデザインを行っているこの時期、聖地もただの通過点だった。

 昨年10月。阪神退団会見で残した「また会いましょう。日本シリーズで」との言葉は本心。試合後は「このチームをどうするか。それだけだ。僕には夢がある」と述べた。「戻ってきて」と懇願する虎党に小さく手を上げ消えた。戻ってくるのは秋。同じ三塁側ベンチだ。【宮下敬至】