DeNAとソフトバンクの衝撃トレードから1週間がたった。メイン捕手だった山本祐大を放出したDeNAのトレードは現状で成功か失敗かの評価ができるものではないが、ファンの間でも賛否両論ある。背景には、いろいろな目的や思惑があるだろう。球団は4年目の松尾汐恩を育成する方針で、ファンに対しても育てる責任はあると思う。
この日の広島戦の4回、モンテロに左前へ2点先制適時打を許した。カウント2-2から3球続けたスライダーだったが、松尾には配球面など課題はたくさんある。ただ、今は技術的なことより、彼が成長していくために何が必要か。それは首脳陣、選手、そして自分自身への「厳しさ」だと思う。
厳しさとは、単に怒るという意味ではない。私は捕手として一人前になるまでに、高卒で入団してから7年かかった。大魔神・佐々木さんとは当初、「フォークを安心して投げられない」理由でコンビを組んでもらえなかった。悔しくて、毎日、何時間もワンバウンドのブロッキング練習を繰り返した。
その姿を佐々木さんが見てくれて、やっと組めるようになった。一人前とは、周囲が認めてくれる存在になるということ。ヤクルト時代の古田さんは、野村監督に説教を受けながらインサイドワークを学んだ。ソフトバンクでは工藤さんがイニングごとに城島を呼んで配球を教えていた。松尾に対し、周囲が厳しく意見やアドバイスを送れるか。そこで信頼関係を築く上で大事なコミュニケーションも生まれる。
中日時代には1試合全球の配球を覚え、巨人の重量打線など相手対策を練った。松尾自身、自分に厳しく努力ができるか。そこは今回のトレードの評価につながると感じている。
体力、思考力のスタミナは、試合に出ないと身につかない。松尾はトレードから3試合連続で先発し、続く5月15日の巨人戦では出なかった。データ重視で左打者を並べる打順にしたかったのだろうが、成長を促す意味では首をかしげてしまう。
「育てながら勝つ」のは難しいが、中途半端な形にならないように願いたい。(日刊スポーツ評論家)




