恥ずかしながら興奮してしまった。こんなことが本当にあるのか。心の底からそう思わせる逆転勝利だ。7回表まで0-7とまったく話にならない展開。「今季のワーストゲームかも」。そんなことを思っていた。それがどうだ。終盤、目を覚ましたかのように阪神打線が奮起。最後は森下翔太の1発で今季初のサヨナラ勝利を記録した。
分岐点はいろいろとあったと思う。7回、主砲・佐藤輝明が打ちにいかず、四球を選んでつなげた場面もそうだ。それに続くドラ1ルーキー・立石正広の甲子園初安打も大きい。坂本誠志郎、高寺望夢ら途中出場の奮起も目立ったのだ。
そんな中、こちらが感じていたことが指揮官・藤川球児が考えていたものと完全に一致した。それは8回表、5番手・桐敷拓馬が苦しみながらも無失点に抑えた場面だ。
この回、先頭打者を佐藤の失策で出した桐敷。その後に連打を浴び、1死満塁のピンチを背負った。その直前の7回、阪神打線は4点を返し、球場の雰囲気を変えている。それだけにこの8回で失点すれば、そのムードが一気にしぼんでしまう。それが分かるだけに虎党もここが重要な局面と思っていたのだろう。
キリシキーッ! ガンバレー! キリシキーッ! ひときわ高い声援や拍手が送られたのだ。長い間、甲子園で阪神のゲームを見ているつもりだが、こういう感じもあまりないかも…。そう思っていた場面を振り返ったのが他でもない球児だった。
「まだ、あの点数ではというところでしたけど。桐敷が登板しているとき、ファンの方の声援が『ここを乗り切ったら』と。球場が一体となってゲームを作ってくれた。本当にそんな空気を強く感じましたね」。やや上気した顔でそう振り返ったのである。
甲子園を埋め尽くした虎党がチームの背中を押したのだ。「ゲームの中で必ず盛り上がりが訪れると、ファン、ライトスタンドは覚えているんじゃないですか。長い歴史で」。8回の桐敷への声援について球児はそういう表現も使った。
どのチームにもファンはいる。それでも言わせてもらえれば、これがタイガースということかもしれない。野球を、甲子園をよく知るファンが多くいる。それが12球団NO・1の人気を誇る阪神最大の強みかもしれないと、あらためて感じさせたゲームだった。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




