<広島3-8ヤクルト>◇24日◇マツダスタジアム

 ヤクルト畠山和洋内野手(28)が、チームを今季初の首位に押し上げる逆転2ランを放った。1点を追う7回2死二塁、直球を狙い打つと、打球は左翼席最上段に到達。4番で先発出場をするようになって5発で6連勝。頼れる主砲は、すごみを増してきた。

 まさに会心の一撃だった。乾いた打球音を残して、ボールが空中に舞い上がると、畠山は右拳を耳の横で握り締めてから、ゆっくりと走りだした。「最高の場面で最高のバッティングができました。完璧です」。着弾地点を確かめるまでもなかった。一振りで、試合を決めた。

 今季の畠山にはすごみがある。電力事情の関係からデーゲームが増えたことが、その一助になった。ファームでは本塁打を量産するほどデーゲームが得意だった。だが、両目0・9という微妙な視力。ナイターになると、本人にも分からないぐらいの誤差で、ボールが見えづらくなっていた。コンタクトレンズをつくり、苦手だったナイターを克服したことで1軍でも活躍できるようになったが、ファームのようにデーゲームばかりの今季の環境は、この男にぴったりだった。ここまで5発中4発が昼間に生まれた。好調もあいまって、ボールは、はっきりと見えている。

 豪快な1発は目を引くが、畠山が打線に加わることで、下位打線が威力を増すという、もう1つの効果がある。前夜、引き分けに持ち込んだ試合でも、ミーティングでは話になかったシュートを相手投手が投げてきていることにいち早く気付き、後続の打者に伝えていた。この2試合で7安打と量産し、リーグ首位打者となった7番宮本も「僕の前にハタケがいるのはすごく大きい」と感謝した。

 その畠山の能力を一番買っているのは、他ならぬ小川監督だ。昨オフ、神宮クラブハウスに忘れ物を取りに行った小川監督は、車を見て畠山も来ていることに気付いた。今季に向け、節制して早くも練習に取り組んでいるのかとうれしく思ったら、ぷっくり太った畠山を見てガッカリした。

 後日「畠山を使いたいんです。でも、そのためにはみんなに納得してもらえるようなことを彼にはしてもらいたいんです」と悔しさをあらわにした。そういう思いがあるから、あえて厳しくする。今季、畠山は開幕スタメンでも使ってもらえなかった。だが、今の活躍に異論を唱える者はいない。6連勝、首位ヤクルトの主砲が、小川監督の思いに応える存在感をようやく見せ始めた。【竹内智信】