<ロッテ0-2巨人>◇28日◇QVCマリン

 巨人内海哲也投手(29)が、今季初の完封でリーグ単独トップの6勝目を挙げた。激しい雨の中、ロッテ唐川との息詰まるような投手戦で、プロ入り自己最多の152球を投げ、4安打10奪三振と力投した。チームの5連敗を阻止し、開幕から34試合続いた完投なしのワースト記録もストップ。頼れる選手会長が、投打がかみ合わず波に乗れなかったチームに上昇ムードを引き寄せた。

 プロ入り最多の152球を投げ終えた感覚はなかった。試合後、投球数を知らされた内海は目を丸くした。「そんなに投げてるとは…。自分では110球くらいかなと。(疲れは)全く感じなかったです」。勝ちたい-。無我夢中で腕を振っていたことを物語っていた。

 チームの逆境を救うのが真のエース。内海はその使命を全うした。球数135球で迎えた9回。「内海コール」を背に、当然のごとくマウンドに向かった。原監督が「完投してくれるピッチャーが出てくれるのが理想の用兵です」と振り返ったように、全幅の信頼で託されたマウンドに気合を入れ直して上がった。

 燃えたぎる闘志を指先からボールに伝えた。147球目からこの日最速タイの142キロを連発。直球の勢いは終盤に向かうほど増した。最後は喜びのあまり、中堅紺田が捕球する前のフライングガッツポーズ。ウイニングボールを手にした瞬間「ふぅー」と吐いた息に、雨の中での熱投劇のすさまじさが詰まっていた。

 完投への決意は21日の日本ハム戦後に固めた。5勝目を挙げたが、3失点で6回降板。飛行機を待つ新千歳空港で「今日はみんなに助けてもらった。次はオレがやらないと」と宣言。9回を投げ抜くイメージを持ちながら、調整期間を過ごした。前日の練習後も「完投できるように」とあらためて決意表明。有言実行の完封だった。

 思考の変化が内海を変えた。走者を許しながらも、要所で粘るのが投球スタイルだったが、昨年は踏ん張りきれないことがあった。

 内海

 どうしても抑えなきゃ、抑えなきゃって。自分でプレッシャーをかけすぎていたんですよね。このボールを打たれたら仕方ない。今年はそう思って投げるように変えたんです。

 防御率1点台の安定感は、独自の思考法にあった。昨年6月18日中日戦以来の完封でリーグ単独トップの6勝目。「完投した時の気持ちを忘れていた。やっぱり新聞でワースト記録とか見るじゃないですか。(完封を)達成できてうれしかった」。雨でぬれた顔がひときわ輝いて見えた。【久保賢吾】