<楽天1-0ソフトバンク>◇13日◇Kスタ宮城

 楽天が内村賢介内野手(25)の素早い逃げ足?

 でもぎ取った貴重な得点を守り抜いた。ソフトバンク戦で初回にけん制で飛び出して挟まれながらも生き残り、高須の適時打で生還。1-0の勝利に貢献した。試合前、東日本大震災で被害を受けた名取市の閖上(ゆりあげ)小を訪問。逆境をはねのける笑顔で励ましてくれた子どもたちに、最高のプレゼントを贈った。

 すばしっこさは、休み時間の鬼ごっこで逃げ回る小学生のようだった。1回、絶妙のバント安打で出塁した内村が、ソフトバンク和田のけん制に引っ掛かった。「ヤバイと思いました。でも粘るしかない」。一、二塁間を逃げに逃げ、小久保のタッチをすり抜け、辛くも一塁ベースに戻った。挟殺プレーで走者が生き残る確率は極めて低い。高須の適時打で生還し「あれが決勝点になりましたからね」と最後まであきらめない執念が実を結んだ。

 試合前、大きなパワーをもらった。楽天ナインを代表して、川井、横川、塩見と名取市の閖上小を訪問。体育館で小学4~6年生128人と交流した。歓迎のあいさつをした大橋泰貴くん(6年)は「今回の大震災で、閖上は壊滅的な被害を受け、僕も家を失いました。でもここにいるみんな元気です。大好きな楽天の選手と交流できてうれしい」。苦労を感じさせない笑顔が、たくましかった。

 キャッチボールやゲームなど、試合前の準備運動が必要ないほど汗だくになって遊んだ。身長163センチの内村は、ほぼ同じ目線に囲まれ「背の高さ、変わらないです」と苦笑い。選手のまわりには常に人だかりができたが、ベテラン川井はゲームで1人だけ取り残された。「人数があまったので、抜けたら誰もいなかった」とマウンド同様、いい味を出した。

 職員が進行役になった数字を当てるゲームでは「星野監督の背番号を足したらいくつ」などクイズ形式で行われた。選手がドキッとする内容もあった。「閖上小の校舎は何階建てでしたか」。子どもたちは震災で被害を受けた校舎が使えず、市内の不二ガ丘小を間借りしている。困難から目を背けず、現実を受け入れ、乗り越えようとする気持ちが、子どもたちの笑顔にあふれていた。

 「自分たちの苦労は苦労じゃない。あらためてやらなきゃと思いました」と内村。本来なら、この日参加予定だったが、痛めた右脇腹の検査で断念した嶋が言った言葉。「何のために僕たちは闘うのか。誰かのために戦える人間は強いということです。絶対に見せましょう、東北の底力を」。チームが下位に低迷する苦しい時期に、内村は一番大事なことを思い出すことができた。【柴田猛夫】