<阪神5-2ヤクルト>◇7日◇京セラドーム大阪

 その瞬間、黄色く染まったスタンドが総立ちになった。新井貴浩内野手(34)が、初球を仕留めた。1点リードの5回1死一塁。松岡の内角フォークを完璧に捉える。左翼席に伸びていく球筋に、バットを放り出し、ゆっくりと歩き出した。7月17日横浜戦以来14試合ぶりの10号2ランで突き放した。

 新井

 しっかりと振り抜けました。初球からフルスイングできるボールはいこうと思っていた。

 今季ヤクルト戦は29打数12安打の打率4割1分4厘、3本塁打、9打点。異次元の数字をたたき出す。

 活躍を後押しされるような刺激がある。夏の風物詩である甲子園に出場する海星(長崎)の加藤慶二監督は、母校広島工で2学年上の先輩でチームのキャプテンを務めていた。当時、レフトを守っていた新井は、三塁のホットコーナーに陣取る加藤監督の背中を見て、練習に励んできた。

 新井

 高校時代にあこがれの先輩だった。

 そんな先輩が育て上げたチームを率いて甲子園に出場。うれしい気持ちとともに、刺激となっている。

 得意の夏場を迎えて「状態はいい。よくなっているほうだと思う」と手応えも口にしている。主砲が打点を挙げれば、7月1日横浜戦から13試合連続負けなしだ。上昇カーブを描き始めた新井のバットが、猛虎軍団のツバメ追撃を呼ぶ。【益田一弘】