<広島1-8ヤクルト>◇15日◇マツダスタジアム

 優勝だ!

 MVPだ!

 ヤクルトの4番・畠山和洋内野手(29)が、1点を追う4回に値千金の逆転2ランを放った。4試合連続の本塁打で、プロ11年目にして初の20本に到達した。リーグトップの77打点を稼ぐ主砲の活躍で、チームは9連勝、9月に入って12勝1敗の好成績。残り29試合で2位中日と6ゲーム差と、完全に安定飛行に入った。全員野球が持ち味のヤクルトだが、10年ぶりの優勝を果たせば畠山がMVPの筆頭候補に挙がりそうだ。

 長いもみあげにヒゲ、威圧感十分の風貌で、畠山が広島ジオをにらみつけた。1点を追う4回無死一塁。重心を低く落とし、がに股スタイルで左足を高く上げる。強く蹴り出した反動で“マン振り”。139キロの直球を、3試合続けてマツダスタジアムの左中間スタンドにたたき込んだ。プロ11年目で初の大台に到達する逆転の20号2ラン。貫禄たっぷりの腹回りで、ゆっくりとベースを1周した。

 これで11日の阪神戦から自身初の4試合連続本塁打だ。2回に館山が3安打で先制を許したが、すぐにバットで振り払った。「たまたまでしょ。ものすごく変化球が気になるとか、インコースが気になるとかがない。余裕を持って打席に立てている」と、好調の要因を分析した。

 これで広島戦は8本塁打、27打点と抜群の相性を誇る。打点王を争うライバル栗原の前で、2打点を挙げて単独トップに立った。小川監督は「本当によく打ってくれた。すごく打席の中で集中力がある。彼の働きなくして、この勝ちはあり得ない」とたたえた。

 4試合連続本塁打はヤクルトの日本人では04年岩村以来となる球団最多タイ。かつての問題児が10年ぶりの優勝を達成すれば、MVPの最有力候補になるまでに成長した。

 小川監督は「相当てこずらせてくれたから」と、2軍監督時代に経験したかつての問題行動を述懐した。

 (1)高卒での入団1年目の時。試合で8番を打たせたら「クリーンアップ以外を打つのは初めてです」とごねた。

 (2)三塁を守って出場したフェニックスリーグでは、2死二、三塁の場面で三塁ゴロを二塁に送球。

 (3)ススキノに宿泊した札幌遠征で出発時に現れず、部屋に電話すると、まだ寝ていた。

 遅刻の常習犯で、罰則でヤクルト戸田球場の土手掃除やごみ拾いをするのが日常だった。そんな男が、生まれ変わって本塁打を量産。小川監督は「想像を超えている」と、愛弟子の成長を喜んでいる。

 明日17日の横浜戦に勝利すれば10連勝。畠山は「今年は25本を目標にしてきたので、少しずつ近づいている。今はホームランより、こういう順位にいることが幸せ」と、チームを思う言葉で締めくくった。最短で19日に優勝マジックが点灯。勝負どころで連勝を続ける強いヤクルトの中心に、心身ともに充実する4番がいる。【前田祐輔】