中日と引き分けて自力CSが消滅した広島にショックが襲った。守護神デニス・サファテ投手(30)が近日中に米国に帰国することになった。28日、鼠径(そけい)ヘルニアのため1軍選手登録を抹消された。手術も検討され、今季中の1軍復帰は絶たれた。ここまでリーグトップの35セーブを挙げて、球団のシーズン最多記録(08年永川勝の38セーブ)の更新が確実視されていた。

 クライマックスシリーズ進出に向けて必死に戦う野村カープが想定外のショックに見舞われた。不動のクローザーとして大活躍していたサファテが戦線離脱。中日戦の試合前練習に姿を見せず、帰国する荷造り用の段ボール箱を持って球場から引き揚げる…。責任感の強い守護神は無念の表情を浮かべて明かす。

 「1カ月近く(股関節の)左右両方にヘルニアを持ちながらやってきた。昨日の投球で悪化した。首脳陣とも話をして、来年もあるから、体調を整えるためにも今年はこれで終わりだ」

 来日1年目の今季は開幕から守護神として獅子奮迅の働きを見せていた。両足の鼠径(そけい)部に異変が生じたのは約1カ月前。痛みに耐えながら過酷なポジションをこなしてきたが、前日27日の中日戦(マツダスタジアム)で決勝点を許し、敗戦投手になり、自ら今季の幕を下ろした。

 「投げるたびにおなかが痛くなり、肩にも影響が出るし、投球フォームにも影響が出る。これ以上、投げられる状態ではない。米国に戻って手術をして、来年を迎えたい。来年のキャンプに間に合うようにするため早めに帰って治したい」

 帰国後は米国の医師にセカンドオピニオンを仰ぎ、今後の治療方針を決める。ただ、サファテ自身が「手術して普通の状態に戻るのに3週間から6週間かかる」とメドを立てており、メスを入れる可能性は高い。球団は来季も契約を更新する方針。来年1月からキャッチボールや遠投を再開し、2月の春季キャンプを万全に迎える青写真を描く。Aクラス入りは厳しい状況だが、野村監督も「仕方ないよ」と表情を曇らせた。

 150キロ台中盤の直球を投げる剛腕として鳴らし、離脱時点の35セーブは阪神藤川、中日岩瀬らをしのいでリーグ1位だった。球団のシーズン最多記録更新まであと4個だったが、来季へと持ち越しになった。

 「シーズン途中なのに、チームメートに申し訳ないよ。クライマックスシリーズ進出の可能性もあるし、すごく残念だね…」

 今季は57試合に登板して防御率1・34と安定。胸すく奪三振ショーは周囲をうならせた。広島の奮闘を支えてきたリリーフエースが、志半ばで来日1年目の戦いを終えた。【酒井俊作】