<西武0-3ソフトバンク>◇1日◇西武ドーム

 試合の最後がよく似合う。ソフトバンクの連覇のマウンドには、守護神馬原孝浩投手(29)がいた。9回を1安打無失点で、今季17セーブ目。開幕直前に母孝子さん(享年57)が死去。不調、そして右肩痛…。苦しんだ1年だった。初の胴上げ投手で報われた。

 いつもは冷静な馬原が、両手を突き上げた。9回2死、最後に投げたのは137キロの変化球。代打浅村を右飛に打ち取ると、歓喜の輪ができる。初めて胴上げ投手となり、我を忘れて喜びを爆発させた。「アウト1つ1つを丁寧にとろうと思った。自分が胴上げ投手というよりも、チームメートがあの場所に立たせてくれたと感謝している」と、感慨に浸った。

 苦しい1年だった。開幕直前の10日深夜に母孝子さんが、がん性髄膜炎で死去した。今年1月には自主トレを行った佐賀から熊本県内の病院まで看病しに行った。開幕直前に容体が急変し、帰らぬ人となった。最期をみとることができたが、よくなってほしいという願いは届かなかった。3人兄弟の末っ子の自分に、限りない愛情を注いでくれた母だった。

 葬儀が終わると合流したが、不調で2軍落ち。「母の死を打たれた言い訳にはしない」というのが、かえってプレッシャーになった。死と野球を切り離そうと考えたが、本来の投球ができない。打ち込まれた時に「チームに迷惑をかけてしまった」とコメントした。すると、高山投手コーチから言葉をかけられた。「チームに迷惑をかけたとはこれから一切、言うな。誰もそんなふうには思っていない。ソフトバンクの守護神は馬原しかない。馬原なくして優勝はない」。熱い言葉が、復活への活力を生んだ。

 下半身を鍛え直して復帰した。7月には右肩を痛めて2度目の離脱。ファン投票で選出された球宴出場を辞退し、1カ月以上のリハビリ生活が始まった。再び鍛え直せる機会ととらえ、前向きな姿勢は失わなかった。右肩は今も万全ではない。「今は正直、80%。その中でもどう投げるか。制球と切れを意識している。ポストシーズンに向けては100%にしたい」と話す。

 運命は自分で切り開く。プロ入り前から言い聞かせている。入団直前のことだった。ふらりと「占い」店に入った。占い師から「14番だけは絶対につけない方がいい」と言われた。だが、つけた背番号は14。「まあ、気にはしていないですけどね」と言いながらも、占い師を見返すつもりで、プロ生活を送ってきた。そして、今がある。マウンドで頼れるのは自分だけ。自分を信じ、次の目標である日本一を狙う。【奈島宏樹】