<阪神2-7中日>◇2日◇甲子園

 本拠地甲子園での連敗が前代未聞の事態を引き起こした。観戦した阪神坂井信也オーナー(63=電鉄本社会長)が球場を出る際、一部ファンから「ふざけるな」とヤジが飛んだ。さわやかな気候の日曜日デーゲームに4万6484人のファンが集まったが“顧客満足度”の低~い敗戦。借金は6となり、クライマックス・シリーズ進出はまた遠のいた。

 2-7の完敗を見届けて、坂井オーナーは甲子園を出た。「残念やったね」と悔しい気持ちをこらえて短く言った。迎えの車に乗り込む際、その姿に気がついた一部のファンから厳しい声が飛んだ。

 「こっちは高い金を払っているんだ。ふざけるな」

 プラカードでの批難や耳に届かないヤジならあっただろう。だが球団オーナーが球場でファンから直接厳しい声を浴びるのは異例のことだ。ヤジの中には、来季続投が既定路線の真弓監督について「いつまで続けさせるんだ」という内容のものもあった。

 阪神では6月、電鉄本社の定例株主総会で球団への厳しい意見が出ることもあるが、あくまで株主の声。これまでも甲子園観戦した坂井オーナーは、ちょうど家路につくファンと同じタイミングで球場を出ることがあった。今回は報道陣らに囲まれながらの移動でファンの目を引いてしまった。

 6カード連続の勝ち越しなし。そしてこの日の試合内容が、坂井オーナーにとっても甲子園に詰めかけた4万6484人のファンにとっても、フラストレーションがたまった。先発久保が初回2死から2四球と長短打3本で4失点。いきなり大きなビハインドを背負って、打線は中日チェンの前に空転した。5回に2点の中押し、7回に1点のダメ押しも食らった。8回に2点を返したが、焼け石に水。7回以降は敗戦ムードにファンが球場を立ち去る展開となった。

 南球団社長は「こんなに大勢のお客さんの前で、ちょっと情けない。先発が打たれているから」と話した。同じ黒星でも、一方的となった展開を悔やんだ。

 9月27日からの6連戦は、首位ヤクルト、2位中日を相手にして1勝5敗と失速。クライマックス・シリーズ圏内の3位巨人とのゲーム差も開く一方だ。南球団社長は「ここまで来たら開き直って、一戦、一戦、執念を見せてほしい」とゲキも飛ばした。借金6は6月29日広島戦以来の低水準だが、シーズンは20試合が残っているのも事実。どんなにふがいない試合で敗れたとしても、可能性がある限り、白旗を揚げるわけにはいかない。【益田一弘】