<中日1-0巨人>◇9日◇ナゴヤドーム

 これぞ、落合野球だ!

 オレ竜が耐えに、耐えて、勝利をつかんだ。毎回の11安打を浴びながら、無失点リレーで投手陣が踏ん張ると延長10回1死一、二塁、代打の堂上剛裕外野手(26)が中越えにサヨナラ打を放った。同じく神宮でサヨナラ勝ちしたヤクルトとのゲーム差は0・5のまま、きょうから本拠地で4連戦。天王山を前にムードは最高潮だ。

 その瞬間、一塁側ベンチがはじけた。満員のスタンドが揺れた。0-0で迎えた延長10回1死一、二塁。代打・堂上剛が巨人の守護神・久保から放った打球は前進守備の中堅の頭上を越えていった。二塁から和田がかえってきた。サヨナラだ。

 腕を突き上げて一塁をまわった主役は、二塁手前で仲間たちにつかまると、水をかけられ、体中をたたかれた。序盤から圧倒的に押されていた展開に耐えて、耐えて、耐え抜いた投手陣に報いた。それだけに、どの笑顔も、いつもより解放感にあふれていた。

 「この前、やられたんで絶対に久保さんを打ってやろうと思って、死ぬ気でいきました!」

 お立ち台で最高の笑顔を見せた堂上剛だが、2日前は眠れない夜を過ごした。7日巨人戦、9回に4点を追いつかれた直後、この日と同じ場面で代打を告げられた。しかも、自分の代わりに下がったのは弟直倫だった。覚悟を持って臨んだサヨナラのチャンスだったが、久保に経験の違いを見せつけられた。フルカウントから「直球」の読みで振りに行くと、ボール球になるフォークを振らされた。空振り三振-。

 「あの打席は練習を頑張っていた弟の代打だったのに…、というのもありました。でも、もう1回、こういう場面が必ず来ると思っていました」

 無念そうな弟の顔、そして、苦しいカウントでもボール球を振らせてくる相手のしたたかさが頭から離れなかった。この2日間は、すり切れるほどその打席の映像を見た。そして、巡ってきたリベンジのチャンス。追い込まれながらも球を引きつけて打つ意識を胸に刻んだ。最後は、2日前に泣いた変化球を仕留めた。

 「十分、動けているからいいんじゃないか」

 落合監督はいつもと同じようにひと言だけ残すと、約3秒で会見場を後にした。ヒットの数は巨人11本に対して6本。7回2死まではゴンザレスの前に無安打に抑えられていた。圧倒的に劣勢の展開を守備力と、勝負強さでモノにした選手たちに、多くの言葉はいらない。同じくサヨナラ勝ちし、名古屋に乗り込んでくるヤクルトと首位決戦。今季の決着をつけるにふさわしい舞台が整った。【鈴木忠平】