<中日4-1ヤクルト>◇19日◇ナゴヤドーム

 中日落合博満監督(57)が竜党に日本一を“公約”した。前日、奇跡の逆転退任V2を決めた落合竜はヤクルトとの本拠地最終戦に臨んだ。満員のファンから熱狂的な落合コールを受けた指揮官は「選手たちはこれからも優勝を目指して戦い続けます」と宣言。CSそして、日本シリーズの制覇をしっかりと視界にとらえた。

 試合終了の瞬間、無数の紙テープがスタンドから投げ込まれた。ヤクルトに快勝し、本拠地のファンに1日遅れの優勝気分をプレゼントした。奇跡の退任Vの熱はまったく冷めていなかった。ぎっしり埋まったスタンドでは「66」のボードがいくつも揺れていた。

 「ありがとう~!」「落合、辞めるな~!」

 熱狂的なファンの声援を浴びながら、落合監督がグラウンドに出てきた。「オ・チ・ア・イ!

 オ・チ・ア・イ!」。その背中にドームを揺るがすかのような落合コールが降ってきた。マイクの前に立って、一呼吸置くと、場内は静まり返った。今季限りでの退任が決まっている指揮官の、最後となるかもしれないあいさつに耳を澄ませた。

 「え~、長い間、お世話になりました。選手はこれからも優勝を目指してグラウンドで戦いを続けますので、どうか、温かい目、心、それをもって選手たちを見守ってください。そして、全国のドラゴンズファンのみなさん、ありがとうございました!」

 一気に言葉を吐き出すと帽子を取って、深々と一礼した。まるで別れのあいさつのようなセリフに、感極まって涙ぐむファンもいた。「おちあ~い!」。8年間、勝利だけを追い求めた指揮官。最後となった今季も、また、勝つことでファンのハートをつかんだ。

 選手たちは戦い続ける-。この言葉に決意が込められていた。自らを含め、コーチ陣の多くは今季限りでの退任が決定した。だが、戦いはまだ終わっていない。9月22日、退任が発表されたが、選手たちには何も告げていない。告げるのは今季最後の戦いが終わった後と心に決めている。契約がある限り、仕事を全うする。監督として1度も成し得ていないリーグ、日本シリーズの完全制覇へ向けた決意表明だった。

 この日、東京から新幹線で戻ると、名古屋は沸騰していた。駅の改札口には落合監督、選手を出迎えようと数え切れないほどの人が集まっていた。選手がくれた最高の花道に、ファンの後押しも加わった。去りゆく指揮官の最後の戦いにはまだ、もう少し、続きがある。【鈴木忠平】