<日本シリーズ:中日1-2ソフトバンク>◇第4戦◇16日◇ナゴヤドーム
ソフトバンクが、中日のお株を奪う1点差逃げ切りで対戦成績を2勝2敗に戻した。圧巻は、171センチのセットアッパー左腕、森福允彦投手(25)の快投だ。1点リードの6回、先発ホールトンがつかまり、無死満塁。絶体絶命の大ピンチで救援した森福は、代打小池、平田、谷繁の3人を11球で仕留め、勝利の立役者になった。敵地での連勝で息を吹き返し、勝負を本拠地福岡での第6戦以降にまで持ち込んだ。
逆転劇を確信していた竜ファンを小さな左腕が1人で黙らせた。対戦3人目の打者谷繁を外角ギリギリのシュートで詰まらせて遊ゴロに仕留める。球場全体を揺らしていた大歓声を、ため息とともに静まり返らせた。
森福
気持ち1本でバッターに向かっていった。もちろんゼロに抑えるつもりだった。
今季の大ブレークを支えた真骨頂を、絶体絶命の状況で見せつけた。6回、先発ホールトンが残した無死満塁で登板。まずは、第1戦に決勝本塁打を放っていた代打小池を3球で追い込むと、最後は外角いっぱいのシュートで空振り三振。続く平田の初球には内角スライダーを投じた。2球目は、初球より厳しいコースに同じ球を投げ込み左飛。谷繁にも、外角へのシュートを丁寧に出し入れした。持ち前の制球力が生み出す「ボール半個分の出し入れ」で、究極のピンチをしのいだ。
恩師の言葉が、昨季終盤からの大躍進を支えている。社会人のシダックス時代。当時の野村監督に、徹底的にコントロールの重要性をたたき込まれた。プロ入りから3年間で結果を残せず、恩師の教えを思い出した。課題だった右打者対策のため、徹底的に外角球の出し入れを磨いた。「ピッチャーはコントロール、という意味がやっとわかってきた」。今季は60試合に登板し、防御率1・13。恩師の深い言葉を、心から理解できるくらいにまで成長した。
茶髪でモデルのような体形。チームメートからは「チャラ男」と言われる。14日の名古屋への移動日も、寝坊でチーム便に乗り遅れ秋山監督からお目玉を食らった。ただ、野球に関しては誰よりも真面目だ。体のケアのため、球場を離れるのはいつも最後。試合前にチームメートが食事を取っている間も、グラウンドに出て相手の打撃練習を必ずチェックする。
秋山監督
森福は経験しているし、ああいう場面も慣れている。森福に頼るしかなかった。普段通りのピッチングをしてくれた。
寝坊を帳消しにするような大仕事を、指揮官も笑顔でたたえた。敵のお家芸「守り勝ち」で、星は2勝2敗の五分。完全に息を吹き返した。【倉成孝史】<森福允彦アラカルト>
生まれ
1986年(昭61)7月29日、愛知県豊橋市生まれ。
◆工藤超え
愛知・豊川高2年夏の県大会で決勝敗退も、56回連続自責点ゼロ。名古屋電気(現愛工大名電)工藤(元西武)の愛知県記録を更新。3年夏も決勝で敗退。
◆ノムさんの愛弟子
社会人野球シダックスでは野村監督に師事。ID野球をたたき込まれる。06年にJR東日本の補強選手として都市対抗に出場。
◆森福の神
06年大学・社会人ドラフト4巡目でソフトバンク入団。10年中盤に左のリリーフとして台頭。36試合で3勝1敗、防御率2・59で、リーグ優勝のキーマンとなり「森福の神」と呼ばれる。
◆変則左腕
左横手から独特のフォームでタイミングを外すスタイル。140キロ台前半の直球に、スライダー、シュート、チェンジアップを交える。171センチ、65キロ。左投げ左打ち。



