<日本シリーズ:中日0-5ソフトバンク>◇第5戦◇17日◇ナゴヤドーム
育成の星が、大金星を挙げ、日本一に王手をかけた。ソフトバンク山田大樹投手(23)が、育成選手の出身としてはパでは史上初となる日本シリーズでの白星を挙げた。中日打線を6回3安打無失点。09年オフには一度は育成契約が切れ、自由契約になった雑草が、大舞台で大きな勝利を手にした。地元福岡で2連敗したものの敵地で3連勝。03年以来8年ぶり、ソフトバンクとしては初の栄冠まで、あと1勝として福岡へ戻る。
「いいぞー、いいぞーヤマダー!」。1点リードの6回裏2死二塁。一打同点というこの日最大のピンチで、山田はフルカウントから3番森野をカーブで空振り三振に切った。左翼席の一角に陣取った鷹ファンが、心の底から叫ぶ。育成の星がつかんだ大金星。ファンもナインも首脳陣も、雑草左腕に大きな大きな賛辞を贈った。
山田
すごく楽しめました。昨日、一昨日と勝ってくれたので負けても向こう(中日)にリーチがかかるだけなんで気楽に投げられました。
森野への決め球は、山田にとって思い入れのあるボールだった。育成選手時代、王会長から伝授された「王カーブ」。06年に育成選手として入団。だが3年間まったく結果が残せず、09年オフには契約が切れた。実家の茨城には帰らず、福岡でアルバイトをして生活しようと覚悟した。
転機は、契約が切れながらも参加していた09年秋季キャンプ。視察に訪れていた王球団会長に素質を見いだされ、育成選手として再契約を勝ち取った。そこで王会長が早実時代に得意としていたカーブを教えてもらった。「王会長がいなかったら今の僕はない」。最高の舞台で、最高の恩返しをやってのけた。
育成1年目には自分がプロでやっていく自信が持てず、少ない給料の中で月3万円の生活をし年間100万円の貯金をした。昨季、支配下登録をつかみ4勝をマーク。今季もローテーション投手として、7勝を挙げた。それでも「3年間結果を出すまでは」と、派手な遊びもせず車も国産車に乗る。
秋山監督
山田が粘った。いいピッチングをしてくれた。
どん底からはい上がってきた雑草が大舞台で大きな大きな花を咲かせ、日本一にあと1勝と迫る白星をつかんだ。【倉成孝史】<山田大樹アラカルト>
◆経歴
1988年(昭63)7月30日、茨城・つくば市生まれ。つくば秀英から06年育成ドラフト1巡目で入団。
◆王カーブ
09年の秋季キャンプで王会長に直接指導を受け、早実時代に投げていたというカーブを伝授された。
◆タカのカネやん
支配下登録された際に背番号121から34に変更。王会長から「同じ背番号34の金田さん(元巨人)を目標にしてほしい」と激励される。昨季は育成出身ではパ・リーグ初の勝利投手になるなど4勝。今年5月20日阪神戦で、育成出身の日本人投手として初完封を記録。
◆サイズ
188センチ、92キロ。左投げ左打ち。



