<阪神2-1巨人>◇5日◇甲子園

 屋根よ~り高い、新井の1発!

 待ちに待ったホームランが飛び出し、待ちに待った勝利を手にしました。甲子園13戦目、阪神で416人目の打者となった5番新井貴浩内野手(35)が巨人内海から左翼ポール際にポーン。ヒヤヒヤ1点差逃げ切り勝ちで大きな大きなソロ。4番を外れて2試合目の新井には笑顔がなかった。ちょっとずれたけど、ここから黄金週間を始めとこうか。

 新井のバットから放たれた打球が、五月晴れの空に伸びていく。4万6826人に見つめられた白球は、左翼ポール際に吸い込まれた。5番新井がGW9連戦の連敗を止める1発だ。先頭の4回。巨人内海の初球、真ん中に入ったチェンジアップをとらえた。

 新井

 いいスイングができた。振り切れた。風にも乗ったね。ナイスゲーム。

 足早にクラブハウスへ消えた。開幕4番のプライド。1発が出たからと言って、それだけで騒ぐ立場ではない。前日4日、開幕から30試合目で初めて4番を外れた。契約更改に臨んだ昨年11月下旬、「4番を頼むと言われた場合、もう外れることのないようにしっかり頑張る」と4番を守り通す固い決意を語っていた。それだけに歯がゆい思いがあったはずだ。

 試合前練習で異変が起こった。通常2カ所で行う打撃練習を1カ所で行った。得点できない中で、あえて練習量を落とした。悪い流れを払拭(ふっしょく)したい一心で、野手全員が1球に集中した。片岡コーチは「ちょっと気分転換もあるし、集中力を高めて本数を少なくしてゲームに入るということ」と意図を説明する。

 前日は杉内にわずか1安打で完封負け。ゴールデンウイークの連戦は7試合中5試合が無得点と苦しんでいた。2日続けて打線改造を施し、悪い流れを打破するための集中練習が功を奏した。片岡コーチは「勝ち試合のホームランで、吹っ切れるんじゃないか」と話した。新井は守備でも集中力を発揮した。本塁打の直前、4回1死一塁で、坂本の三塁線へのセーフティーバントを素手で拾い上げ、ジャンピングスロー。間一髪でアウトにした。

 2リーグ分立後の猛虎史上でも最も遅い開幕13試合目で出た甲子園1号。こどもの日の聖地のボルテージが最高潮に達した。新井にとっても2打席連発した4月11日広島戦(マツダスタジアム)以来、21試合ぶり。チーム全体でも16試合ぶりのアーチで、球団ワーストを更新した連続無本塁打試合のトンネルを抜け出した。

 ホームランがやっとなら、白星もやっとの思いでつかみ取った。9日ぶりの六甲おろしが鳴り響く。2分けを挟んだ連敗を5でストップし、勝率を1日で5割に戻した。新井の一撃で和田阪神が再び勢いに乗る。【岡本亜貴子】

 ▼阪神が連続試合本塁打なしの記録を15で止めた。4月17日ヤクルト戦(ほっともっと神戸)4回にブラゼルが本塁打を放って以降、この日の新井まで580人ノーアーチだった。また本拠地甲子園では今季13試合目にして初の本塁打。08年の9試合を大幅に更新し、2リーグ分立後最も遅い本拠地1号となった。4月6日巨人戦1回先頭の平野から数え、新井が416人目の打者だった。