<巨人7-7DeNA>◇8日◇宇都宮

 中畑DeNAが執念で引き分けに持ち込んだ。巨人に4回まで0-6と大量リードされたが、ここから反撃。8回までに3点差に詰め、9回に西村を攻めて、ラミレス、吉村の適時打などで同点に追いつく。さらに2死満塁と攻め立てたが、すでに野手を使い切り、4番手で登板していた藤江をそのまま打席に。勝ち越せずも、9回裏は時間稼ぎまでして、貴重な「1分け」をもぎとった。両軍39人が入り乱れての大熱戦。こんな試合ばかりなら、金返せとは言われない?

 藤江の顔に緊張感はみじんもなかった。3点を奪い、最大6点差を追いついて迎えた9回2死満塁。一打勝ち越しのチャンスに、打席に立ったのはプロ4年でわずか1安打の右腕。すでにベンチ入り野手15人を使い切り、残るのは投手のみ。中畑清監督(58)は打席に向かう藤江の肩を抱いて、耳打ちした。

 1球1球、大声を出し、「打者藤江」を鼓舞。結果は投ゴロで逆転とはいかなかったが、チーム全員が笑顔で出迎えた。「ベンチ、選手の気持ちが乗り移ったようなスイングをしてくれた。ピッチャーじゃなかったね」。バットを折られながらも、8球粘った姿に、大きな拍手を送った。

 最も重視するあきらめない姿勢が、土壇場の同点劇を呼び込んだ。3点ビハインドの9回2死二塁。ラミレスの中前打で2点差とすると、続く中村の打球は捕手への飛球。誰もがゲームセットと思ったが、阿部のまさかの落球で、1点差。押せ押せムードは止まることなく、吉村の右中間二塁打で同点に追いついた。

 中畑監督は「やったぞ、やったぞ!

 つないでつないでの同点劇。奇跡に等しい!」と大絶叫。まるで優勝を決めたかのように、スタンドに向かってガッツポーズを繰り返した。「最後まであきらめない野球の原点を出せた。これはうちのモットー。血管3本は切れたよ。すげえチームだな。最高!」とまくしたてた。

 “奇跡”の勢いを消したくなかった。「うちは出がらし。引き分けに持ち込めれば、勝ちに等しい」と、9回裏は、あからさまに引き分けを狙いにいった。3時間半まで残り5分。最初は「どっしりいこうと言ったんだけど」(中畑監督)、2死から藤村に安打が出たタイミングで、時間稼ぎを決断。投手加賀は計6回、一塁けん制を繰り返した。「とにかく引き分けにしたかった。中途半端なけん制をしてすみません。これも作戦です」。同監督は隠すことなく、潔くベンチの指示だったことを認めた。

 最後は「せこいぜ」でつかみ取ったドロー。「全員野球で引き分け。チーム全員がヒーロー。やられたらたまらないけどね。たっちゃん(原監督)、ゴメンね」。連勝も止まらずにすんだ。この勢いで、今日9日、監督として初見参となる東京ドームに乗り込む。【佐竹実】