<阪神1-0中日>◇10日◇甲子園

 薄氷を踏む思いだった。9回2死満塁。阪神の守護神・藤川球児投手(31)が谷繁と対峙(たいじ)する。フルカウントから3球続けてファウルでカットされた。9球目、真ん中低めへ147キロ直球は三塁線へのゴロとなった。捕球した新井良の一塁送球はやや高めにそれた。捕球した新井貴がベースを踏みゲームセット。まさに「虎の子の1点」を守りきった。藤川は「ボールはいい感じだった。まだまだ。シーズン中1回離れているので、今日、勝てたので精神的に楽になりました。助かりました」と胸をなで下ろした。

 ハラハラの展開を切り抜けた安堵(あんど)が浮かんだ。9回に榎田からスイッチ。初球に、この日最速の153キロをマークすると、スタンドがざわめいた。1死から森野、和田に連打を浴びた。続く井端に四球を与え、1死満塁のピンチを招くと、異様な空気に包まれる。6番堂上剛には、内角高め150キロ直球でバットを折り、ボテボテの一塁ゴロ。新井貴が丁寧に本塁送球し、同点を阻止。バックの懸命な守りもあり、復帰戦を自身の甲子園100セーブで飾った。

 右膝の負傷で2軍調整中は、1軍の戦いぶりをテレビでチェック。鳴尾浜の球団施設内で、チーム関係者と前夜の試合について、会話に加わることもあったという。精神的支柱の守護神がようやく復帰登板を果たし、前半戦最後のヤマ場を乗り切る態勢は整った。

 藤川は「最後は自分なんで、うまくいかないこともあるけど、しっかりやっていきたい。今日は良かった」と言った。連敗は6でストップ。2週間の長期遠征でかさんだ借金を1つ減らし、8とした。甲子園9連戦初戦の白星。6月24日DeNA戦以来の六甲おろしが響き渡った。【岡本亜貴子】